マンション新築工事において階段室の吹付け塗装中に発生した有機溶剤中毒
業種 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.948
発生状況
本災害は、鉄筋コンクリート造り3階建てマンションの新築工事において発生したものであり、被災者2人は、同工事の塗装作業を請負ったN社の作業者である。災害発生当時、2人は1階から3階へ通じる階段室内部の吹付け塗装作業に従事していた。
塗装作業は2名で作業を行い、うち1名が吹付け作業を、もう1名が塗料の調合等の作業を担当し、塗料(トルエン25〜35%、キシレン5〜15%)と希釈剤(トルエン30〜40%、キシレン30〜40%、メチルイソブチルケトン1〜10%)を1対1で混合したものを吹付け塗装機を用いて階段室内壁面に塗装するというものである。
階段室は図に示す形状で、建物の内部に設けられているが、1階出入口にドア、開閉可能な窓が5箇所、屋上には点検口が設けられている。また、各階にはマンション各部屋の玄関のドアが設けられている。
災害発生当日、被災者Aが吹付け塗装機による吹付け作業を、被災者Bが塗料の調合等の作業を担当することとして午前8時30分頃から作業を開始した。
塗料の調合、窓等のマスキング等の準備作業の後、3階から順次階下へ向う手順で下塗りを行った。
約30分で下塗りを終え、一担休憩に入ろうとしたが、Aは自分が塗り残した箇所を発見したため、当該箇所を塗装した後、A、B両名は屋外へ出て約30分間休憩をとった。
休憩の後、Aは仕上げ塗装を行うため階段室へ入ったが、2階へ上がったところで意識がなくなりその場で倒れた。
Aが階段室に入って約10分経過後、屋外にいたBは、Aと連絡をとるため階段室内部に入ったところ、2階でもたれるようにして倒れているAを発見した。
BはAを救出するため屋外へ運び出したが、建物を出たところでBも倒れた。
他の作業を行っていた作業者が両名を発見して直ちに病院に収容したところ、急性有機溶剤中毒と診断されたものである。
塗装を行った階段室には5箇所の窓及び最上階の天井部に屋上点検口が設けられているが、塗装作業時には全てが閉じられていた上、マスキングのためビニールシートがかけられていた。
また、出入口及び各部屋のドアも閉じられており、強制換気も行われていなかったため、階段室はほぼ密閉の状態となっていた。下塗り時に消費された有機溶剤は約9kgであることから、災害発生時、当該作業内はかなり高濃度の有機溶剤が滞留していたと考えられる。
さらに、A、B両名は有機ガス用防毒マスクを使用していたが、既に吸収缶が破過しており、有効なものではなかった。
なお、A、B両名とも有機溶剤作業主任者技能講習は修了しておらず、2人の所属する事業場にも講習修了者はいなかった。健康診断についても、一般健康診断は実施されていたが、有機溶剤特殊健康診断は実施されていなかった。
原因
本災害の発生原因としては、ドア、窓等が閉じられた通風が不十分な屋内作業場において、十分な対策を講ずることなく、作業者を有機溶剤作業に就かせたことが挙げられる。対策
1 屋内作業場で塗装作業を行う場合には、十分に通風を良くするとともに、全体換気装置を設置して有効に稼動させること。2 呼吸用保護具を常に有効な状態で使用できるよう、破過時間等について十分に管理すること。
なお、有機溶剤の濃度が高濃度になるおそれのある場所での作業は、送気マスクを使用すること。
3 有機溶剤作業主任者を選任し、作業の指揮、保護具の使用状況の監視等その職務を十分に行わせること。
4 作業者に対し、有機溶剤の有害性、呼吸用保護具の適切な使用方法等についての労働衛生教育を行うこと。