超音波自動洗浄装置の清掃中に酸欠死
業種 | その他の電気機械器具製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.947
発生状況
災害の発生した事業場は、自動販売機等の電気製品に使用されているマグネットリレーの製造を行っている。製品工程の中に、超音波自動洗浄装置による製品の洗浄があり、本災害はこの超音波自動洗浄装置の定期清掃の際に起きた。超音波洗浄装置は、縦3.3m、横3m、高さ2.6mのボックスの中に6つの槽(第1槽から第6槽まで)が円周状に設置されており、自動的に製品を回転させて洗浄する構造をしている。第1槽から第4槽にフロン液が入っている。フロン液は、屋外にある2基のタンクに溜められており、その中に窒素ガスを封入し圧力をかけることによって、パイプを通してフロン液が槽に送られるようになっている。
この洗浄装置は、月に1回フロン液の入替えを行うことになっており、被災当日の午後5時から第1、2槽の点検および第3、4槽のフロン液の入替えと、各槽の槽と槽の補助タンクの間にあり、フィルターの役目をする、「仕切り網」の清掃を被災者(作業者)A、班長B、作業者Cの3人で開始した。AとCの2人は第3、4槽の液抜きを行い、Bは第1、2槽の点検を行っていた。午後6時20分頃からBは第3槽へのフロン液の注入を開始したところ、液面計のフロン液が上昇せず、第3槽のタンク内でブクブクという音がするのを聞き注入を中止した。Bは屋外のタンクが空になったことを知り、一緒に作業していたCに、もう1基の屋外タンクに注入バルブを切り替えさせてフロン液を第3槽に注入した。
そのとき、Aは第3槽の仕切り網の清掃を終え、洗浄装置のステンレスカバーの上に腹ばいになり、第3槽の上部から、のぞき込むようにして手を伸ばし、仕切り網を槽内の所定の位置に取りつけていたが、そのまま意識を失った。気付いたBとCがAをカバー上から引きずり降して救出し、すぐに救急車で搬送したが、手当ての甲斐なく死亡した。
原因
1 第3槽にフロン液を供給していた屋外タンクが空になり、圧を加えていた窒素ガスが第3槽に流入したため、フロンの蒸気と撹拌されて槽内に充満し、酸素欠乏状態となったこと。2 被災者が第3槽内の仕切り網の取付け作業を行っているのにかかわらず、フロン液の注入を行ったこと。
3 槽内が酸素欠乏危険場所であることについて、事業場、作業者とも認識がなかったこと。
対策
1 酸素欠乏のおそれのある場所については、作業を行う前に必ず酸素濃度の測定を実施すること。2 酸素欠乏のおそれのある場所については、作業開始前に換気を実施し、酸素濃度を18%以上にすること。
3 作業中に酸素欠乏状態になるおそれがある場合には、空気呼吸器等を使用して作業を行うこと。
4 槽内の作業を行うときは、第1種酸素欠乏危険作業主任者技能講習修了者を作業主任者に選任し、作業方法の決定、作業の指揮等の職務を行わせること。
5 槽内の作業に従事する作業者に対して酸素欠乏症についての知識、槽内作業の危険性、槽内の酸素濃度や危険を防止するための作業手順等措置、危険を防止するための具体的内容についての特別教育を実施すること。
6 洗浄装置の点検、清掃等の作業を行う場合、作業者が槽内にいるときには、フロン液を注入したり装置を稼動したりしないような措置を講じること。