砂防ダムの型わく内で内燃機関を使用したため発生した一酸化炭素中毒
業種 | 砂防工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 砂防工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.942
発生状況
本工事は、高さ5.5m、全長46.5mの砂防ダムを建設するものであり、砂防ダムの本堤を3分割して3期に分けて施工し、その後ダム下部の側壁、垂直壁、水たたき部を施工する。災害はこのうち本堤のコンクリート打設中に発生した。砂防ダム本堤のコンクリート打設はあらかじめ組まれた型枠にコンクリートを投入、硬化させる工事である。まず打設予定地の床堀りを行った後、予定施工分の型枠(鉄板製)を組み上げる。次に型枠を囲む形で丸太を組み、作業足場とする。また、本工事は冬期にコンクリート打設作業を行うことになるため、丸太足場をビニールシートで覆い昼夜を問わず石油ストーブで保温を行っていた。
型枠内へのコンクリート打設作業は、丸太足場の上部に取りつけられたホッパーに投入されたコンクリートをシュートを通して型枠内に投下する方法で行う。型枠内には、シュートを保持し移動させる者1名、コンクリートの状態を均質にするためのガソリンエンジン式バイブレータを操作する者1名、型枠近くのコンクリートを足ぶみして仕上げを行う型枠側足ぶみ作業者2名、その他に作業指揮者等が入り、打設作業を行ってゆく。
ダム本堤工事は三区画に分けて行われ、うち一区画は前日までに作業が終了していた。災害発生当日は、別の区画の最底部分へのコンクリート打設を行っていた。
午前8時30分頃から打設作業を開始し、型枠内には作業者4名の他に作業指示者1名が入っていた。ミキサー車5台分のコンクリートを投入し終え、6台目を待っていた午前11時30分頃、シュート保持・移動担当者であるAが突然うずくまり、ヘルメットを落とした。Aは直ちに型枠内にいた他の作業者たちにより外に運び出されたが意識がはっきりせず、顔色が悪かったので、病院へ運ばれた。その途中Aは気を失ったが、病院で酸素吸入をうけ30分程で意識を回復した。バイブレータのガソリンエンジンの近くで作業を行っていたこと等から一酸化炭素中毒と診断され、入院加療を受けることとなった。
原因
1 自然換気の不十分な型枠内でバイブレータの動力源として内燃機関を使用したこと。型枠の上部が空けられていたため高温の排気ガスの一部は外部へ自然排出されたものの、バイブレータエンジンの排気口近くで作業を行っていた被災者は他の作業者よりも高濃度の一酸化炭素を吸入してしまい、中毒に致ったと考えられる。
2 作業者に対する労働衛生教育が十分でなかったため、内燃機関から発生する一酸化炭素の有害性の認識が不十分で、中毒予防措置がとれなかったこと。
バイブレータはその機械構成上、エンジン部分と振動部分とをあまり離すことができず、型枠内の底の部分にコンクリートを打設する作業に使用する場合には型枠の内部に持ち込まざるを得ない。この場合、排気ガス中に含まれる一酸化炭素が型枠内に滞留しないよう強制換気することあるいは排気ガスを型枠の外へ導く等の対策を講じるべきであったにもかかわらず、こういった対策をとらなかったため、本災害が発生する原因となったと考えられる。
対策
1 型枠の内部等のように自然換気があまり期待できない場所では内燃機関を使用しないこと。電動式バイブレータ、あるいはエンジン部とバイブレータ部が十分離れていてエンジン部を型枠の外に置けるタイプのバイブレータを使用する。2 内燃機関を使用せざるを得ない場合には、内燃機関から発生する排気ガスが型枠内に滞留しないよう、十分な能力をもった換気装置を設置する等の対策を講じること。
3 作業者の労働衛生教育を十分に行い、内燃機関の排ガスに含まれる成分、一酸化炭素の毒性及び中毒予防に対する知識を身に付けさせること。