クリーンルーム内の改修工業で内燃機関を用いたため発生した一酸化炭素中毒
業種 | その他の建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建築工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.937
発生状況
A社は、主として建築物の天井、壁、床等の防水工事を施工している従業員数29名の小企業である。A社は、B社(食料品製造業)のクリーンルームの床の改修工事を、元請であるC社を通して請負った。クリーンルームは、図−1に示すように縦14m、横8m、高さ2.4m(一部3.1m)で、床面積約101m2、気積約253.4m3の大きさで、扉以外に開口部はなかった。工事は、このクリーンルームの東側部分約70m2の改修を行うもので、工期は2日間である。
改修作業の内容は、
[1] 下地処理(既存のエポキシ塗コンクリート床を3〜5mmの深さで削り取る。)
[2] プライマー(接着剤)塗布
[3] クロス入れ(プライマーの上にガラスクロスを貼り付ける)
[4] しごき(クロスの目地をつぶす)
[5] 上塗り(シリカル樹脂の塗布)
[6] トップコート塗り(樹脂の仕上げ塗り)
[7] 仕上げ清掃
の順で行われる。
災害は[1]の下地処理の作業中に発生したが、この作業は、ガソリンエンジンによって作動するハツリ機械で床をはつり、その後、電動式のサンダーで研磨するものである。
被災当日、作業者5名、午前中に準備作業を行い、12時45分より下地処理作業を開始した。このとき、クリーンルーム東南側よりボータブルファン(70m3/min)によって押し込み送風を行うとともに、南側の出入口扉2ヵ所(6.9m2)を開いた。
作業開始後約60分で2名の作業者が気分が悪くなって退出したが、作業は他の作業者によってそのまま続けられ、さらに20分ほど経過した時点で1名の作業者が倒れた。そのため、その者を病院へ運び、急性一酸化炭素(CO)中毒と診断され、気分が悪くなって退出した作業者2名も診察を受けたところ、そのうち1名が同様の診断を受けた。
原因
(1) はつり機の内燃機関より一酸化炭素(CO)ガスが発生するにもかかわらず、十分な換気を行わなかったこと。クリーンルームは、一般には、一見すると通常の事務所のようであるが、室内の空気を清浄に保つための高性能の換気操置をひとたび止めてしまえば、換気に関しては極めて不十分な状態となるものである。今回の事例の場合もそのような状態でありながら、設置されていたポータブルファンは一酸化炭素対策のために必要な換気量を考慮されたものではなく、換気能力は不十分であった。
しかも、ポータブルファンの送気口は、クリーンルーム内へ流入した気流が、そのままチェッカー室へ流出してしまうような配置で設置されており、実際に作業を行っているクリーンルームの北側へは気流が届かなかったものと考えられる。そのため、換気効率はかなり悪かったものと考えられる。
(2) 2名の作業者が気分が悪くなったときに、その原因について検討することなく作業を続けたこと。
(3) はつり機械から発生した一酸化炭素ガスに対する認識が甘く十分な換気を行う等の必要な装置を怠ったこと等があげられる。
対策
(1) クリーンルームの部のように通気が不十分な場所においては、内燃機関を使用しないこと。本事例のような大容量の電源を得ることが可能な場所では、内燃機関の替りに電動式のはつり装置を用いるようにする。 (2) やむを得ず内燃機関を使用せざるを得ない場合には、次の対策を講ずること。 | |
[1] 十分な能力を持った換気装置を、排ガスが室外へ放出できるような空気の流れを作るような配置で設置すること。 なお、窓の少ない建築物内でポータブルファンを用いる場合、設置場所、作業場の構造等によっては、単に空気を環流させるだけで、換気が不十分になることがあるので、ポータブルファンの吸気口を直接外部へ出すか、排気側とは独立した部屋へ出す必要がある。(図−2) [2] 一酸化炭素濃度のチェックを適宜行うこと。 [3] 必要な場合にはエアラインマスクを用いること。 |