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労働災害事例

内燃機関の排気ガスにより発生した一酸化炭素中毒

内燃機関の排気ガスにより発生した一酸化炭素中毒
業種 その他
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
建設業のみ 工事の種類 その他の建設工事
災害の種類 中毒
被害者数
死亡者数:− 休業者数:2人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.935

発生状況

本工事は、共同溝内に内径600mmのガス管を1790mにわたり布設するものであり、このうち被災者の所属するY社では、
[1] 材料等の投入口への配置
[2] 材料等の共同溝への搬入、
[3] 管を支えるサドルサポートの設置、
[4] 配管の各工程を請負っていた。
 災害発生当日は、午前8時30分より30分程地上ヤードにおいてミーティングを行った後、3班に分かれて共同溝内に入り、作業を行った。まず被災者2名を含むA班3名及びB班4名が、ウインチや台車等を使用してガス管を所定の位置に配列する作業を行い、現場作業長を含むC班3名がガス管を固定するサドルサポート及びその支持台の設置作業を行った。A班は昼食時の休憩をはさみ、午後3時頃まで配列作業を行った後、サドルサポートの支持台をコンクリート床に固定するため、ケミカルアンカー用鉄筋を差し込む孔をコンクリート床にあける作業に取りかかった。作業は電気ドリルを用い、支持台1ヵ所につき4ないし6ヵ所の孔をコンクリート床にあけるものであり、1ヵ所あたり約10分の時間を要した。電気ドリルは2台を3名の作業者が交替で使用した。電気ドリルの電源は、作業場所が共同溝内の既設コンセントから200mほど離れており、電圧降下によりキャプタイヤケーブルを通じては十分な電力が得られないため、ガソリンエンジンを用いる発電機を利用することとした。
 作業開始後1時間ほどすると、穿孔作業を行っていた作業者甲が少し気分が悪いということで作業を中止し、作業地点から仮設出入口方向へ約100mほど離れた所で休み、作業者乙が代わって作業についた。しかし、その後15分ほどすると、穿孔作業を行っていた作業者乙、丙とも相断いで頭痛、目まいを訴え、作業継続が困難となったため作業を中止し、作業地点から最も近く(約380m)に位置する共同溝既設の自然換気口から外部に脱出した。比較的症状の軽かった作業者甲は先に作業場所を離れて近くにいたB班の班長に事情を話し、さらに現場責任者にも連絡した。その後3名を救急車で病院に収容したところ、発電機の排気ガスを吸入したことによる一酸化炭素中毒と診断され、作業者乙は3日、作業者丙は1日の入院加療を要した。

原因

[1] 共同溝内において、排気ガスの十分な対策措置を講ずること無く、内燃機関(ガソリンエンジン)を有する発電機を使用したこと。
[2] 共同溝内には強制換気装置が2ヵ所、自然換気口が5ヵ所(うち2ヵ所は仮設送風機設置)設置されており、その全てが稼動していたが、災害発生場所は最も近い自然換気口から約380m、最も近い強制換気装置からは約530m離れており、作業場所付近の通気は不十分であったこと。
[3] 作業者に対する労働衛生教育が十分でなく、内燃機関の使用により一酸化炭素が発生することを認識しておらず、また一酸化炭素の毒性及び予防に対する認識が低かったこと。
[4] 作業場所に、非常時に備え、酸素呼吸器等を備え付けていなかったこと。

対策

[1] 共同溝内の自然換気が不十分な場所では、内燃機関を有する機械を使用しないこと。やむをえず使用する場合には、換気の実施等排気ガスに対する必要な措置を講じること。
[2] 作業者の労働衛生教育を十分に行い、内燃機関の排ガスに含まれる成分、一酸化炭素の毒性及び中毒予防に対する知識を身に付けさせること。
[3] 非常時に備え、酸素呼吸器等を作業場所に備え付け、使用方法等についても十分理解させておくこと。
[4] 安全衛生管理を実効的かつ総合的に進める組織体制を確立すること。
[5] 換気装置については、定期的に点検を行い、常に有効な状態を保持するよう、適正な管理を行うこと。