浴室の塗装工事中に有機溶剤中毒で被災
業種 | 建築設備工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 建築設備工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.933
発生状況
甲会社は、建物塗装業を営む会社であるがY邸の吹付塗装工事を請負った。工期は2日で、建物外廻りの塗装及び浴室内の塗装であった。災害発生当日は、工期の2日目で、作業者Aと作業指揮者Bが午前8時頃にY邸に到着した。
午前中は、前日に行った建物外廻りの塗装のチェックとビニール覆いの取りはずし作業を行った。
昼食終了後、午後1時から浴室内の塗装作業にとりかかった。浴室内の窓にビニールを取り付ける等の準備を行った後、午後1時30分頃から吹付スプレーガンを使用して塗装作業を開始した。吹付スプレーガンを使用するAは、有機ガス用防毒マスクを着用していた。しかしながら、当該マスクの呼吸缶は、破過時間を超えていたため適切な性能を有していないものであった。
また、浴室内には、1分間あたり45m3の換気量を有するポータブルファンを設置し、戸外に排気するとともに、窓を覆うように取り付けたビニールにも穴をあけ開口部を設けていた。
しかしながら、ファンは全体換気装置としての能力が不十分であるばかりでなく窓の外には隣家が近接し、浴室に設置されている換気口もビニールで覆っていたこともあり、換気を十分に行うことができる状態ではなかった。
Aは、有機ガス用防毒マスクを着用していたにもかかわらず、有機溶剤の臭気が著しかったので、時々戸外に出て、深呼吸を行いながら作業を続行した。
午後3時30分頃、浴室内の塗装が終了した直後に、Aは、意識を失って浴室内に倒れてしまった。
浴室の外で作業を行っていたBは、Aが倒れる音を聞きつけ、救助に入ったが、保護具を使用していなかったこともあり、Aと同じように意識を失って倒れてしまった。
異常に気づいたY邸の家人の通報により、AとBは、救急隊により救出されたが、急性有機溶剤中毒で入院した。
なお、塗装に使用していた有機溶剤は2種類でその成分と含有量は、次のとおりであり、使用量はそれぞれ8lであった。
No1.
・ トルエン 10〜20%
・ イソプロピルアルコール 5〜10%
・ キシレン 5〜10%
No.2.
・ トルエン 20〜30%
・ キシレン 50〜60%
原因
1. 換気が不十分であり、有機ガス用防毒マスクの吸収缶も破過時間を超えたものを使用していたこと。2. 有機溶剤作業主任者を選任し、当該業務に従事する作業者の指揮、保護具の使用状況の監視等にあたらせなかったこと。
3. 被災者の救出に際し、保護具を使用しなかったこと。
対策
1. 能力が十分な、全体換気装置を利用する等当該作業を行うにあたっては、十分に換気を行うこと。 2. 保護具を常時有効かつ清潔に保持すること。(特に作業開始には、吸収缶の能力の確認を行うこと) 3. 有機溶剤作業主任者を選任し、その者に、次の事項を行わせること。 | |
イ. 作業に従事する作業者が有機溶剤により汚染され又はこれを吸入しないように、作業の方法を決定し作業者を指揮すること。 ロ. 保護具の使用状況を監視すること。 | |
4. 当該作業に従事する作業者に対し | |
イ. 有機溶剤の人体に及ぼす作用 ロ. 有機溶剤等の取扱い上の注意事項 ハ. 有機溶剤による中毒が発生したときの応急処置 | |
等の安全衛生教育を実施すること。 |