橋桁廃鋼材のガス溶断作業で発生した鉛中毒
業種 | その他の金属製品製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.903
発生状況
本災害は、含鉛塗料が塗布してある橋桁廃鋼材を解体するため、ガス溶断作業を実施した際発生した。災害発生事業場は、金属廃材を解体、切断するなどして処理する作業を行っていた。縦約70m、横約20mの鉄骨造建屋であり、壁が約半分の面で、残りは開放状態となっていた。しかし、局所排気装置は設けられていなかった。この作業が行われた場所には、この事業場では含鉛塗料が塗られた鋼材処理は今までに1〜2回行っただけであり、その際特に問題も発生しなかったことから、事業者、作業主任者ともに鉛中毒に関する記憶はなかった。
今回の作業は、鉄橋の橋桁の撤去にともない発生した鋼廃材6本を購入し、LPGを用いて、長さ1〜1.5m程度に溶断するものであり、作業者1名が、3日間の予定で作業を行った。この橋桁には塗料が塗られていたが、塗料のかき落としは行われないままに溶断が行われていた。このうち、下塗り用塗料には四酸化三鉛(Pb3O4)が含まれていた。被災者は、1日目は呼吸用保護具を使用せずに作業を行っていたが、作業終了後体調不調を訴えた。このため事業者が、2、3日目にそれぞれ使い捨て式防じんマスク、有機ガス用防毒マスクを着用させるとともに、休憩時間を長くとらせるようにしていた。しかし、依然として体調不調を訴えたため4日目に受診し、鉛中毒と診断されたものである。
原因
[1] 事業者および作業者が、溶断にともない鉛ヒュームが発生することを認識していなかったこと。[2] 局所排気装置を設置しておらず、また有効な呼吸用保護具等を着用していないなど、鉛ヒュームに対するばく露防止対策が不十分であったこと。
[3] 作業を安全に実施するための作業指示等が行われなかったこと。
対策
[1] 作業において発生する物質の有害性について十分把握すること。[2] 局所排気装置を設置するなど、有害ガスに対するばく露防止対策を徹底させること。
[3] 作業主任者を選任し、適切な衛生管理体制を確立すること。
[4] 作業に従事する作業者に対して、適切な作業方法、発生する物質の有害性について安全衛生教育を実施すること。