製造ラインの機器修理作業に用いた有機溶剤で、他の作業を行っていた者が有機溶剤中毒となる
業種 | 計量器測定器製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.894
発生状況
本災害は、産業用温度測定記録装置の部品製造工程ラインに設置された作業用ポンプの修理作業において発生した。作業は、ポンプの異常が発見されたため、これを分解して清掃し、再び組み立てた後に調整するというものであった。この作業の進め方、留意事項等については、特段の指示はなく、当該製造工程の3名の作業者の判断によって行われた。
このうち清掃作業は、洗面器にメチルエチルケトンを注ぎ、これに分解したポンプの部品を1時間程度浸しておき、その後にブラシを用いて汚れを落すという方法を取ったが、この間洗面器をその部品製造工程ラインと隣にある組み立て工程ラインとの間の通路に置いておいた。清掃後の再組み立て作業に更に1時間ほどを要したが、その間も洗面器はメチルエチルケトンを入れたままその場所に放置しておいた。この作業に当たった者と周囲の作業者は、いずれも呼吸用保護具を使用していなかった。
作業開始後、周辺に有機溶剤の臭気が立ち込めたため、扇風機を用いて排出しようと試みた。しかし、作業室内が広いために外気との直接の換気ができないと判断した作業者が、製造ラインの作業台に設置された小型の局所排気装置に向けて扇風機を設置して2時間ほどの作業の間、送風を続けた。被災者は、この間扇風機の風下に位置する組み立て工程ラインで組み立ての作業を行っていたが、気分が悪くなり医師の診察を受けたところ、有機溶剤中毒と診断された。
原因
[1] 換気を十分に行わないまま有機溶剤を使用したこと。[2] 有機溶剤が発散しやすい形で容器に入れられ、使用されていたこと。
[3] 修理作業等についての作業標準が定められていなかったこと。
[4] 有機溶剤の有害性について作業者および被災者が十分に認識していなかったこと。
[5] 作業主任者が選任されていないなど衛生管理体制が脆弱であったこと。
対策
[1] 有機溶剤を用いる作業は、換気のよい場所で行うこと。これが困難な場合には、ポータブル換気装置を用いる、他の作業者を退避させるなどの適切な措置を取ること。[2] 有機溶剤を使用する際には、蒸気が発散しにくい容器に入れること。
[3] 修理作業等臨時の作業であっても危険性または有害性を持つ物質を取り扱う場合には作業標準を定め、これに従って作業させること。
[4] 適切な安全衛生教育を実施すること。
[5] 作業主任者を選任し、適切な衛生管理体制を確立すること。