感光剤試作研究に従事し、慢性有機溶剤中毒となる
業種 | 化学工業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.893
発生状況
本災害は、有機感光剤を用いた装置の試作を行う工程において発生した。この試作の工程のうち被災者2名の行っていた作業は、まず、アルミ管をクロロホルムを含ませた脱脂綿で払拭し、続いてトリクロロエタンによる超音波洗浄工程を経て、有機感光剤樹脂を3層に塗布するものであった。樹脂の塗布には、溶剤としてメタノール、メチルエチルケトン、クロロホルムが用いられていた。一連の作業は、クリーンルーム内で行われ、設置された局所排気装置を稼働させていたが、局所排気装置の能力が不十分であったため、これらの有機溶剤の蒸気がクリーンルーム内に漏れ、呼吸用保護具を使用していない被災者2名が長期間にわたってばく露していたものである。
被災者は2名とも本作業に就いて2か月間を経過していたが、その間に頭痛等の自覚症状は全くなく、有機溶剤の特殊健康診断を受診してはじめて肝機能の異常が指摘された。
なお、作業者に対する安全衛生教育が一部未実施となっており、配置替えの際の健康診断も実施されていなかった。また、作業環境測定の方法が不適切であるとともに、局所排気装置の点検は全く行われていなかった。
原因
[1] 設置の時点で局所排気装置の性能が法定基準に満たず、また、所轄労働基準監督署に計画届を提出していなかったこと。[2] 局所排気装置の点検が不十分であったこと。
[3] 作業環境測定の方法が不適切であり、その評価が適切でなかったこと。
[4] 有機溶剤作業主任者が未選任であり、衛生管理体制が確立されていなかったこと。
[5] 安全衛生教育が不十分であったこと。
対策
[1] 局所排気装置の制御風速が法定基準を満たすよう改善するとともに、計画の届け出を適正に行うこと。[2] 局所排気装置の点検を適切に行うこと。
[3] 適切な作業環境測定を実施すること。
[4] 作業主任者を選任し、この者に職場巡視を行わせる等、衛生管理体制を確立させること。
[5] 適切な安全衛生教育を実施すること。