船倉内における酸素欠乏症
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.892
発生状況
本災害は、木材運搬船におけるくん蒸作業において、甲板上から薬剤散布用のホースを船倉内に降ろしていた作業者が、ひっかかったホースを直そうとタラップを降りて船倉内に立ち入ったところ、酸欠のため意識を失い、転落し、また知らせを聞いてかけつけた職長も、被災者を救出しようとして二次災害を被り、ともに死亡するに至ったものである。災害が発生した木材運搬船(約1万5千トン)は、約1カ月間の航海を経て、前日に入港してきたばかりであった。船倉は、ハッチカバーが閉じられており、船倉内部およびハッチカバー上に原木が積載されていた。
当日は、朝から荷役作業者により、ハッチカバー上に積まれていた原木の陸揚げが行われたので、昼食時の荷役作業休止を待って、くん蒸作業のための準備を行うことになった。
作業は、まずくん蒸のための薬剤が洩れないようにと、船倉に通じる出入口数カ所をビニールシートで目張りすることから始められた。作業者Aは、甲板上にいて、船倉へ通ずるエスケープホールとよばれる出入口箇所から、船倉へ投薬用のビニールホースを入れていたところ、ホースがタラップの途中にひっかかった。Aは、様子をみるために、タラップを降りはじめたところ、1、2段ほど降りたところで、意識を失い約2.5m下の原木の上に落ちた。
知らせを聞いてかけつけた職長Bは、「危ないから入るな」との、まわりの制止も聞かず無防備のまま救出に入り、そのまま上がってこなかったものである。また、その後他の作業者が救出のため持参していた空気呼吸器を装着して入ろうとしたが、マスクの面体のサイズが合わず、断念せざるを得なかった。
2人は、その後にかけつけた消防署のレスキュー隊に救出されたものの、間もなく死亡した。
なお、事故翌日に、同船の船倉内の酸素濃度を測定したところ、約10%程度であった。
原因
[1] 酸欠に対する認識が十分でなく、酸欠危険場所である原木を積載してある船倉内の酸素濃度を測定せず、また換気もしなかったこと。[2] 船倉に立ち入った作業者、職長に空気呼吸器等を使用させなかったこと。
対策
[1] 酸素欠乏危険場所に立ち入る場合には、事前に酸素濃度の測定を行い、18%以上であることを確認すること。[2] 酸素濃度が18%未満の場合には、換気を行うこと。
これが困難な場合には、当該場所に立ち入る作業者に空気呼吸器等を使用させること。