地下ピット内における酸素欠乏症
業種 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.884
発生状況
本災害は、鉄筋5階建てのテナントビル新築工事において、すでにコンクリートを打設し終わった地下湧水ピットの型わく解体作業を請け負った甲社の作業者が、中にたまった雨水を排出するため水中ポンプを据え付けようとピット内に入ったところ、酸素欠乏症により倒れ、これを助けようとしてピット内に入った3人も次々と倒れたものである。本工事における型わく解体作業の手順は、2人1組となり、まず、ピットの開口部にある鉄筋を折り曲げ、パネルの蓋を取り除く。次に、作業者1名がピット内に入って、側壁の金物、鋼管及びパネルを解体する。続いて、天井部の型わく材を解体し、他の1名が地上部でこれらの型わく材の引き上げ作業を行うというものである。ビル地下部にピットは14個あり、本工事では、これらの型わくを順次解体していくものであった。
災害発生当日は、前日に引き続き、午前からピット内の型わく解体作業を行った。昼食後、新たなピット(幅1.94m×長さ4.37m×高さ1.22m)の作業を行おうとしたところ、このピット内はコンクリート打設以来3カ月にわたって雨水が深くたまっており、作業ができない状態であった。そのため、まず水抜きをすることになり、作業者Aがピット内に入り、外にいる作業者Bから水中ポンプを受け取って、これを据え付けようとしていたとき、突然倒れた。
これを見ていたBをはじめ3名が順次、救出をしようとピット内に入ったが次々と倒れた。
その後、酸素ボンベを装着した消防レスキュー隊により、全員が救出されたが、酸素欠乏症としてそれぞれ20日程度の休業を要するに至った。
ピット内に酸素欠乏空気が発生した原因は、コンクリート打設以来、ほとんど密閉された状態が3カ月続いており、また季節が夏ということで、連日の暑さにより雨水に含まれる有機物が腐敗したことによる酸素の消費と考えられる。
なお、「雨水、河川の流水又は湧水が滞留しており、又は滞留したことのある槽、暗きょ、マンホール又はピットの内部」における作業は、酸素欠乏症等防止規則が適用され、災害防止のために所要の措置が義務付けられている。
原因
[1] 雨水が滞留していたため、何らかの酸化反応によりピット内の酸素が欠乏したこと。[2] 2次災害は、作業者が1人倒れたにもかかわらず、他の作業者が有効な呼吸用保護具の着用等を行わずに救出のためピット内に入ったこと。
対策
[1] 酸素欠乏危険作業を行う場合には、測定器具を備え付け、その日の作業を開始する前などにピット内の酸素濃度を測定し、酸素欠乏の状況を調査すること。[2] 上記の測定結果をもとに、作業場の空気中の酸素濃度を常時18%以上に保つため必要な換気を行うこと。
[3] 酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その指揮のもとに作業を行うこと。
[4] 空気呼吸器等の避難用具を備え付け、災害発生時の救出作業においては作業者に必ずこれを使用させるなど、2次災害防止のために必要な措置を講じること。
[5] 作業者に対し、酸素欠乏の発生の原因、事故の場合の退避及び救急そ生の方法等について特別の教育を行い、酸素欠乏症にかかわる知識の不足から生じる災害を防止すること。