亜鉛びき配管の溶断作業中、酸化亜鉛ヒュームにより中毒
業種 | その他の廃棄物処理業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.877
発生状況
B社は金属廃品の回収販売を営んでいる会社であるが、既設建築物の冷暖房設備の撤去工事を請け負い、これを作業者Aが担当することとなった。災害発生当日、Aは、B社の元請けであるC社の現場監督の指示に従い、午前10時頃より建物の6階から8階までの配管室(高さ2.4m、幅2m、奥行4m)内に設けられた冷暖房用亜鉛びき配管(直径20cm)の撤去作業に着手した。撤去作業は配管室内に上下に通っている配管をガス溶断機を用いて天井部と床部の2カ所で溶断するもので、保護眼鏡とヘルメットは着用していたものの、防じんマスク等呼吸用保護具は着用しなかった。なお、C社の監督者からは、これに関し、ガス溶断中に発生する酸化亜鉛ヒュームの有害性の説明や保護具の着用、換気の実施等の指示は行われなかった。
配管室には窓および換気設備が設けられておらず、ガス溶断による煙と熱が内部にこもったが、Aは作業を継続した。午前11時頃になり、Aの作業の様子を見たC社の現場監督者が配管室内の空気を外部に排出するため可搬式の排風機を作業現場に持ち込んだものの、あまり効果は見られなかった。
Aは、午前12時と午後3時にそれぞれ1時間程休憩を取りつつ午後4時30分まで作業を続け、計22本の配管を撤去した。
その後Aは帰宅し食事中に気分が悪くなり、悪寒と40℃の発熱により病院にて診察を受けた結果、酸化亜鉛ヒュームを吸入したことによる急性中毒と診断され12日間入院し、5日間の自宅療養の後職場に復帰した。
原因
[1] 換気が不十分な屋内作業場(配管室内)で、局所排気か、全体換気をするなど十分な換気を行わず、作業者に保護具を着用させないで亜鉛びき鋼管のガス溶断作業を行わせたこと。[2] 被災者はガス溶接技能講習を受講していない無資格者であり、ガス溶接等における危険有害性について認識がなかったこと。
[3] ガス溶断作業の直接監督者の適切な作業指示がなされていなかったこと。
対策
[1] 金属等のガス溶接等作業を行うことにより有害なガス、蒸気、粉じん等を発生するおそれのある屋内作業場については、事前に安全衛生を確保するための作業計画を立てるとともに、災害防止のため局所排気装置を設けるか全体換気をするなど十分な換気をすること。なお、ガス溶断を行う場合に、過剰酸素による火傷を防止する観点からも、作業中は十分な換気を行うこと。[2] 作業者に対して、災害防止のための安全衛生教育を実施すること。
[3] 作業者に保護具を着用させること。
[4] ガス溶断作業については有資格者を就かせるとともに、作業監督者を選任し、この者に現場に即応した安全衛生を確保するための作業指示を行わせること。