はしけの雨水排水作業に用いたエンジンポンプの排気ガスによる一酸化炭素中毒
業種 | 港湾荷役業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.876
発生状況
被災者Aは、エンジンの付いていない300トン積のはしけを使用し、石炭を客先の工場へ運搬する仕事に従事し、はしけへの石炭の積込み、積卸し時の立合いのほか、はしけの管理も併せて行っていた。Aの管理していたはしけは、船体の大部分が屋根のない船倉からなり、船尾の部分にハッチ付きの居住室が設けられていた。居住室は2つに仕切られ、ハッチの真下には1畳半の広さの前室があり、それに続いて2畳半の広さの畳敷きの船室があった。
なお、前室には、排水用のガソリンエンジンポンプが常設されており、このポンプを使用するときにはポンプ本体より少し立ち上っている排気筒に、デッキより下りている排気ホースを14cm程かぶせて使い、排水作業のない時には、船室へ行く時に邪魔にならないよう、排気ホースを外して壁にひもで留めていた。
被災当日は石炭運搬の仕事はなかったが、前日の夕方から降り出した雨が船倉にたまったため、当日午前11時頃より前室のポンプを使用しA1人で排水作業を開始した。雨は夕方まで降り続き、排水作業も雨が止むまで続けられた。
排水作業終了後、Aは帰り仕たくのため私服に着替えようと居住室に入ったところ、ポンプの排気筒から漏れた一酸化炭素が居住室内に溜っていたため、これを吸入して倒れ、翌朝死亡しているのを同僚に発見された。
原因
[1] 排気ホースを排気筒にかぶせたときのすき間が直径で7.4cmもあり、そこから一酸化炭素が漏れたこと。[2] 大雨であったため、通常使用するはずの換気用空気取入パイプを取り付けず、採光用ハッチも閉めていたこと。
対策
[1] 排気筒と排気ホースの接続部はフランジを用いる等により確実に接続すること。また、排気ホースはなるべく太く、曲りの少ないものとすること。[2] ポンプの設置方法を検討し、ポンプおよび排気ホースが前室と船室との通行の邪魔にならないようにすること。
[3] 雨の降込まない換気口を備えるとともに、排水ポンプの稼動中は、十分な換気を行うこと。