既設建築物設備工事業における一酸化炭素中毒
業種 | 機械器具設置工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 機械器具設置工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.868
発生状況
1 自動車部品工場において、1階の成形工場に成形機械を新設するに当たり、機械の高さが天井までの高さより高いために、1階天井に60cm×60cmの開口部を設ける工事を行った。1階天井の開口部を設ける位置は2階の従業員更衣室の床部分であり、床のコンクリートの厚さは23cmであった。また、工事は作業者1名で1日で終わる程度のものであった。
2 災害発生当日の朝、現場において事業者は被災者に対して穴を開ける位置と大きさについてのみ説明を行った。その後被災者はいったん会社に戻って、1人で作業に必要と思われる機械、工具等を車に積んで現場に戻った。一方、事業者は、被災者に説明をした後、他の現場へ向かうため、その現場を離れた。
被災者が現場に持ち込んだのは、足場、ハンマードリル、石材用の電動カッターおよびガソリンエンジンの発電機であった。被災者が発電機を持ち込んだ理由は、工場のコンセントからの電気を用いて作業をした場合、過電流により、工場のブレーカーが作動することを心配したためである。
○災害発生時の作業
(1) 被災者は1人で9時ごろから作業を開始し、1階から足場を使って穴開け作業を行った。この時は屋外に発電機を置いて、そこからコードを用いて工具に電気を送って作業を行った。
(2) 10時30分ごろ、被災者は2階から穴開け作業を行うために発電機を2階へ運んだ。穴を開ける位置は2階の従業員更衣室であり、広さは面積30.1m2、容積81.3m3で窓のない無風の部屋であった。被災者が2階に発電機を持ち込んで作業を行った理由は、2階の作業場まで十分届く長さの延長用コードを現場に持ってきていなかったことと、発電機を1階の屋外に置いた場合、発電機の運転スイッチを操作する都度、2階から1階へ降りて行かなければならず、これが面倒であったためである。
(3) 11時ごろ、被災者は発電機を運転し、ハンマードリルおよび電動カッターを用いて2階の作業場で穴開け作業を開始した。11時50分ごろに被災者はいったん時間を確認し、さらに作業を続行した。
(4) 12時15分ごろ、被災者は、部屋から出てこないのを不審に思った工場責任者により倒れているところを発見され、病院に運ばれたものである。
なお、作業は部屋の出入口のドアを閉めて行われていた。また、途中、作業の段取り変え等のため2回くらい発電機のエンジンを停止しており、実際の発電機の運転時間は不明である。
(5) 工場責任者が被災者を発見したときには、発電機のエンジンは止まった状態であったが、発電機の燃料タンクは空の状態であり、発電機のスイッチは「運転」の状態で、交流スイッチも「ON」の状態であった。
被災者は朝、発電機を現場に持ち込む際に、燃料のガソリンの量を確認しておらず、11時50分ごろに時間を確認したときには発電機は運転していたことから、被災者が意識を失って倒れた後、燃料切れで発電機が停止したものと考えられる。
原因
1 密閉状態の部屋で発電機のガソリンエンジンを運転していた際に発生する一酸化炭素による中毒に対して十分な知識がなかったこと。2 事業者が被災者に対して、作業の内容について説明を行った際、作業方法等について適切な指示を行っていなかったこと。
対策
1 密閉状態の部屋でガソリンエンジン等の内燃機関を使用しないこと。2 作業者に対し、作業について指示を行う場合、作業方法、使用する機械、工具等について適切な指示を行うこと。
3 内燃機関等を使用する作業を行う際には、作業者に対して一酸化炭素中毒についての労働衛生教育を行うこと。