突沸した水酸化ナトリウムを浴び熱症および薬傷を負う
業種 | 飲料(酒類を除く)製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.865
発生状況
災害が発生した「加温機」は、製品の飲料をビン詰めした後、ラベルを貼る前の工程にあり、ラベルを貼る際のビン表面の結露を防止するため、温水をシャワリングしてビン内部の温度を約30℃にするものである。シャワリングした温水は、シャワーポンプサクションという装置によりポンプアップして循環させている。加温機の内部には、ビンが割れてもれた飲料のかす等による汚れが溜まるので、月に1回、80℃の温水に水酸化ナトリウムを加えて20分間殺菌洗浄を行っている。
災害発生当日は、工場全体の一斉清掃日であり、被災者は充填室の清掃を同僚2名と行った後、加温機の水酸化ナトリウムによる殺菌作業に1人で取りかかった。
被災者は、加温機の制御盤の自動・手動切り替えスイッチを手動にし、昇温ボタンを押し温水の温度を上げた後、高さ60cmの踏み台に乗り、水酸化ナトリウム25kg入りの袋を抱えるように持って、シャワーポンプサクションの投入口からフレーク状の水酸化ナトリウムを投入していたところ、誤って一時に多量に入れてしまい、突沸した水酸化ナトリウムを浴びて熱症および薬傷を負った。このとき、袋に残っていた水酸化ナトリウムは、約10kgであった。
この工場における加温機の水酸化ナトリウムによる殺菌作業については、作業標準が定められており、温水の温度を40℃以下にして水酸化ナトリウムを投入すること、少量ずつ投入すること、ゴム手袋、ゴーグル、長靴を必ず着用すること等が決められていた。しかしながら、災害発生時の温水の温度は65℃であった。また、被災者は、半袖の作業服、作業ズボンに安全靴、保護帽、保護メガネを着用していたが、保護手袋は着用していなかった。
原因
(1) 水酸化ナトリウムを投入した際に一時に多量に入ってしまったこと。(2) 温水の温度を65℃に昇温してから水酸化ナトリウムを投入したこと。
(3) 水酸化ナトリウムによる加温機の殺菌洗浄を行うに当たり、十分な保護具を着用していなかったこと。
(4) 水酸化ナトリウムによる加温機の殺菌洗浄を行うに当たり、作業標準に定められた作業方法が指示徹底されていなかったこと。
(5) 水酸化ナトリウムの危険性・有害性に係る衛生教育等が十分に行われていなかったこと。
対策
(1) 作業者が、水酸化ナトリウム25kg入りの袋を、袋ごと手で持ち上げて投入口に投入するという作業方法については、水酸化ナトリウムが一時に多量に投入されてしまう危険性があるため、あらかじめ小分けにして投入する等、適切な作業方法をとること。(2) 作業標準に基づいて作業者に教育を行うとともに、作業場所に手順や禁止事項の掲示を行い、作業標準の遵守を徹底すること。
(3) 水酸化ナトリウムの危険性・有害性について、作業者に対し、必要な教育や危険予知訓練等を行い、作業者の意識の向上を図ること。