イオン交換樹脂塔内における酸素欠乏症
業種 | 飲料(酒類を除く)製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.864
発生状況
本災害は、澱粉糖化プラントのイオン交換樹脂塔内において散水管の目詰り除去作業を行ったところ、塔内が糖液の発酵により酸欠状態になっていたため被災したものである。本災害が発生したのは、コーンスターチ(とうもろこし澱粉)からコーンシロップ等の糖化製品を製造するため、液状のとうもろこし澱粉に糖化酵素を加えるなどしてつくられた糖液から、塩類等をイオン交換樹脂により除去するイオン交換樹脂塔である。同塔は、直径約1.8m、高さ約4.6mで、1基当たりに約4,500lのイオン交換樹脂が入れられている。このイオン交換樹脂は、糖液の処理を平均35時間程度行うと、その能力が低下するため、酸およびアルカリ剤を用いて再生され、繰り返し使用されている。
イオン交換樹脂再生作業において使用する散水管には、直径1mm程度の穴が開けられているが、水垢などが付着することにより1年に1〜2度程度詰まることがあり、その都度イオン交換樹脂塔内に入り、除去作業を行うことが必要となる。
災害の発生当日、午前7時30分ごろより、イオン交換樹脂の再生作業を行うために、塔内の糖液抜きと水の投入による水洗いが行われた。
この後、労働者Aが、イオン交換樹脂の再生作業を行おうとしたところ、塔内に設置されている散水管の穴に目詰りがあることを発見した。このため、Aは、散水管の目詰りを取る作業を行おうとして、午前11時30分ごろ、塔の上部にある直径50cmのマンホールより塔内に入り、糖の発酵により塔内が酸欠状態となっていたため、酸素欠乏症となったものである。
イオン交換樹脂塔内は、通常の製造工程においては糖液で満たされているため空気との接触はなく、また、糖液の濃度も30〜40%と糖の発酵には濃度が高いことから、糖の発酵は起こりにくい状態となっている。
本災害においては、塔内の糖液を抜き、水洗いが行われたことにより、イオン交換樹脂や塔内壁等に残っていた糖液が適度な濃度となり、そのため、糖液が自然発酵を起こし、4時間程度の比較的短時間で塔内が酸欠状態になったものと考えられる。
原因
1 イオン交換樹脂塔内が残留糖液の発酵により酸素欠乏危険場所となることを作業者に正しく認識させるよう教育が行われていなかったこと。2 イオン交換樹脂塔内は、酸素欠乏危険場所であったのにもかかわらず、入室前に酸素濃度測定を実施していなかったこと。
3 当該場所の酸素濃度を18%以上に保つように換気を実施していなかったこと。
対策
1 酸素欠乏危険場所となる恐れのあるタンク等閉ざされていた空間内において作業を行う場合には、当該作業を開始する前に当該空間内の酸素濃度測定を実施すること。2 酸素欠乏危険場所となる恐れのあるタンク等閉ざされていた空間内において作業を行う場合には、当該作業場所の空気の酸素濃度を18%以上に保つよう換気すること。
3 予定外の作業を行うこととなる場合には、作業の管理者は、その旨の作業者からの事前の連絡、適切な作業の指示を徹底すること。
4 作業者等に作業に関連する設備の危険性の情報を労働衛生教育の実施等を通じ、的確に周知すること。