有機溶剤による皮膚炎
業種 | 電子機器用・通信機器用部品製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.863
発生状況
被災者は、いつもどおり電気部品の切削加工を行った後、部品を金網かごに入れ、これをジクロロメタンの入った洗浄槽につけ、かごを上下にゆらすことによって、洗浄を行った。通常の製造工程は以下のとおりであった。製造工程
加工→洗浄→乾燥→仕上げ→洗浄→乾燥→出荷
被災者は、入社以来数回洗浄作業に従事し、手が腫れていたが、そのまま気にせずに作業を行っていたところ、発熱し、3日たっても熱がひかないため、近くの診療所に行ったところ、ジクロロメタンによる接触性皮膚炎と診断された。
なお、洗浄機および乾燥機には局所排気装置が設けられていたが、制御風速が不足していた。また、防護手袋はロッカーに備えつけてあったものの、洗浄作業は素手で行われていた。
原因
災害発生の直接的な原因としては、保護手袋を用いず、ジクロロメタンに素手を浸していたこと(防護手袋は用意されていたが、着用について指示されておらず、また素手で行っている被災者に対してだれも注意していない)が考えられるが、これと併せて、・ 新規採用者に対して、有機溶剤の危険性や取り扱い方法等の衛生教育が行われていないこと。
・ 有機溶剤作業主任者、衛生管理者および産業医を選任していないなど、労働衛生体制が不十分であり、これが局所排気装置の整備不良や衛生教育の未実施を招いたと考えられること(なお、早期に産業医に相談されていれば、症状が軽いうちに原因が判明したものと考えられる)。
・ 洗浄機および乾燥機の局所排気装置が整備不良で制御風速が不足していたこと(定期自主検査および作業環境測定が行われておらず、呼吸用保護具も用意されていなかった)。
対策
・ 有機溶剤を用いる際には、可能な限り自動化等により有機溶剤を密閉すること。・ 密閉できない場合は、適正な性能を有する局所排気装置を設けるとともに、作業に当たり適切な保護具を着用すること。
・ 職場の衛生管理体制を確立し、作業主任者、衛生管理者、産業医等がそれぞれの職務を十分に果たすとともに、衛生委員会において職場の衛生管理者について審議し実行していくこと。
・ 衛生管理者や産業医等を活用して、従業員に対する衛生教育、職場巡視を実施し、必要な助言・勧告を行わせること。