職場のあんぜんサイト

  1. ホーム
  2. 労働災害事例
  3. 労働災害事例(検索結果詳細)

労働災害事例

日本酒の製造工程における酸素欠乏症

日本酒の製造工程における酸素欠乏症
業種 酒類製造業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 異常環境等
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:2人
不休者数:1人 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.854

発生状況

(1) 災害発生当日は、仕込庫内の仕込タンクおよび他の2カ所のタンクに麹を入れる作業を、約10名の作業者で行っていた。作業内容は、麹を布製の袋(約15kg)に入れ、仕込庫から約50m離れた麹室から、3つの仕込タンクに合計約420kgの麹を投入するというもので、1名当たり約3回運ぶというものであった。
(2) 作業を開始して約30分後、作業者が仕込タンクの中にあお向けに倒れている被災者を発見した。発見者は、周囲に急を知らせ、杜氏で酸素欠乏危険作業主任者となっている者が単独でタンクに掛けられていたはしごを使って中に入り、被災者を助け出そうとしたが、すぐに意識を失ってその場に座りこんだ。また、他の作業者が、両名を発見し、被災者を救助しようとして、はしごを降りたが、同様にタンク内で意識を失った。
(3) その後、製造課長が、工場に備え付けてあった換気用電動ファンを用いて、タンク内の空気を置換し、呼吸用マスクを装着してタンク内に入り、ロープを用いて、3名の被災者を救助した。なお、最初の被災者が発見されてから救助されるまでに、約10分経過していた。
(4) 災害発生時において、仕込タンクに入れられた内容物の液面は、底から約10cmであった。なお、被災状況については図に示す。

原因

(1) 酸素欠乏危険場所であり、酸素濃度が低くなっていた仕込タンクの中に、事前に酸素濃度の測定および空気の置換等を行わずに、被災者が入ったこと。
(2) 酸素欠乏危険作業主任者が適正な作業指示を行っていなかったこと。
(3) 被災者に対し、適正な酸素欠乏危険作業に係る特別教育が行われておらず、被災者の酸素欠乏症等に対する認識が低かったこと。
(4) 麹を入れていた袋等をタンク内に落とした場合に、人がタンク内に入らずに取れるような用具や作業標準等が準備されていなかったこと。また、人がタンク内で倒れた場合の救出方法が、各作業者に徹底されていなかったこと。

対策

(1) 酸素欠乏危険場所である仕込タンク等に、本件の袋等の物が落ちた場合に、作業者がタンク内に入らなくてよいような用具を設け、その作業方法を徹底すること。
(2) やむを得ず、酸素欠乏危険場所に作業者が入る場合は、必ず酸素欠乏危険作業主任者が、酸素濃度を測定するとともに、空気の置換等の適切な措置を講ずること。
(3) 仕込タンク等の酸素欠乏危険場所で作業者が倒れている場合等の救出方法について標準を作り、定期的に訓練を実施すること。
(4) 酸素欠乏危険作業主任者の適切な指導のもとで、酸素欠乏危険場所における作業を行うこと。
(5) 酸素欠乏危険作業に従事する作業者に対し特別の教育を行い、酸素欠乏症の防止に関し必要な事項について、周知、徹底すること。