タンクの清掃中、残留アニリンを皮膚から吸収し中毒

業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.853
発生状況
A化学工業株式会社は、アニリンを用いて顔料中間体(アセト酢酸アニライド)を製造するものであるが、製品を変更するため反応タンク2基の内部清掃をB社に発注した。発注に際し、B社に対し、アニリンが入っていたことは説明したが、アニリンの有害性および皮膚吸収の危険性などについて十分な説明は行われなかった。
B社では、フレキシブルダクト、ゴム合羽、ホースマスク等を用意して作業にとりかかった。
清掃作業は、3人の作業者によりタンクと配管とに分けて実施することとし、まず、次のような手順でタンク2基の清掃を実施した。
タンク内のアニリン残液をバキュームローダーを使用して抜き、続いて送風機で内部に空気を送り込み、中和剤を撒いたあと高圧洗浄機で内部を洗浄した。続いて洗浄液をバキュームローダーを用いて吸引し、B社の3人がタンク内に入り、壁面をウエスで拭いた。
1時間ほどで1基目のタンク清掃が終了し30分ほど休憩をとったあと2基目のタンクの清掃を行った。
続いて、配管内面の洗浄にとりかかった。
この配管内面の作業はタンク内面の作業と異なり、洗浄液をバキュームローダーで吸引せず、1人が高圧洗浄を行い、他の労働者が洗浄水をバケツで受け取るという方法で作業を行った。この際配管内に少量のアニリンが残っており、これが被災者の手にかかったが、そのまま作業を続けた。
作業終了後、被災者の気分が悪くなり、すぐに病院で手当てを受けたがチアノーゼが強く1週間入院した。
他の作業者がゴム手袋を着用していたのに対し、被災者は軍手で作業をしていたものである。
原因
(1) 衛生管理が不徹底作業者のうち1名のみ軍手着用のまま作業を継続させる等保護具の使用状況の管理が甘い。また、測定器についてもアニリン濃度測定用ではなかったこと。
(2) 労働衛生教育の不徹底
作業者に対する労働衛生教育が行われていなかったため、アニリンの人体に及ぼす影響、取扱注意事項等、特に皮膚からの吸収についての知識が不足しており、作業者の用いた保護具が不適切であった。
(3) 発注者からの教示不足
発注に際し、タンクの内容物等について、有害性取扱注意事項等を明確に周知しなかったこと。
対策
(1) 有害物取り扱い作業の方法を確立し、適切な換気・保護具の使用を行わせること。(2) 労働衛生教育を実施すること。
(3) 発注者は、清掃等の発注に際し、内容物の危険・有害性等について受注者に対して周知すること。