発電所の溶接工事で酸欠
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.845
発生状況
災害の発生した工事は、発電所タービン建屋のコンクリート床に埋設された直径10cmのステンレス製排水配管の補修(溶接)を、図1に示すとおり、工事箇所のコンクリート床に、90cm×80cm、深さ70cmのはつり穴を開けて行うものである。災害発生当日、溶接作業の下準備として、班長、配管工および溶接工の3名からなる作業班で、排水配管を接続、仮付けし、つなぎ目にビニールテープを貼り付けた。つなぎ目の溶接方法は、溶接部分をアルゴンガスでシールドして行うタングステンアーク溶接(TIG溶接)と呼ばれるもので、排水配管内部にも裏ガスとしてアルゴンガスを流すものである。
その後溶接作業に入り、まず溶接工が排水配管の立ち上り口にアルゴンガスのゴムホースを差し込み、手元弁を開けた。2分後、溶接工が右手に溶接トーチ、左手に溶接棒を持ってはつり穴に入り、前かがみになって作業を開始した。
作業開始直後、溶接工はいびきをかいて動かなくなった。はつり穴上部から作業を監視していた班長が溶接工の名前を呼んだが返事がないため、溶接工をはつり穴から抱き起こし救出した。
病院に収容された溶接工は、酸素欠乏症と診断され、10日間の療養を要することになった。
なお、災害発生後、作業を再現し、はつり穴内部の酸素濃度を測定したところ、14%であった。
原因
(1) アルゴンガスが配管接合部から漏えいし、はつり穴内部に滞留したため、酸素濃度が低下したこと。(2) 作業を行う前に酸素濃度を測定せず、換気も行わなかったこと。また、空気呼吸器等も使用しなかったこと。
(3) 作業主任者の選任をはじめとする安全衛生管理体制が整備されていなかったこと。
(4) 班長以下3名とも、アルゴンガスの特性、酸素欠乏の発生原因等に関する知識がなかったこと。
対策
(1) 通風が不十分なはつり穴内部においてアルゴンガスを使用して溶接作業を行う場合には、作業開始前に作業位置の酸素濃度を測定すること。(2) また、はつり穴内部の酸素濃度を18%以上に保つように換気するか、空気呼吸器等を使用すること。
(3) 作業主任者を選任し、作業方法の決定、作業者の指揮、設備の点検等を行わせること。
(4) 作業に従事する作業者に対し、酸素欠乏の発生原因、空気呼吸器等の使用方法等について特別の教育を行うこと。