風呂場の塗装作業中に有機溶剤中毒
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.839
発生状況
災害当日、塗装工である被災者1名は、図1のような住宅の風呂場(体積6.2m2、0.045m3の換気窓)の天井、壁面の塗装を行うため、スプレーガンにて、吹き付け塗装作業を単独で午前9時より開始した。作業は、出入口のドアを約1cm開けた状態で、約5分間吹き付け塗装を行い、数分間作業場の風呂場から出て休憩を行う形態で、正午から約1時間の休憩をはさんで行われていた。
午後5時ごろ、作業場を訪れた事業者が、風呂場の浴槽で倒れていた被災者を発見し、救急車で病院に搬送した。
急性有機溶剤中毒と診断され、休業1日であった。
使用した塗料及びシンナーの成分は、いずれも第2種有機溶剤であるトルエン78.8%、キシレン8.2%、メタノール0.8%、イソプロピルアルコール4.1%、酢酸エチル4.1%、メチルエチルケトン4.1%、当日の消費量は、約6,400gと推定される。(これらがすべて作業場で蒸発したと仮定すると、有機溶剤の気中濃度は、約30%弱になる量である。)
保護具は、当日、新しい吸収缶に取り替えた直結式小型有機ガス用防毒マスクを着用していたが、被災者は意識を失う前に、有機溶剤の臭気を感じていた。
なお、有機溶剤作業主任者は選任されておらず、有機溶剤業務に従事する作業者に対する労働衛生教育も被災者は受けていなかった。
原因
(1) 屋内作業場等における壁、天井等の有機溶剤業務において、有機溶剤の蒸発面積が広く、局所排気装置及び密閉化設備を設けることが困難なときは、全体換気装置を設け、また、送気マスク又は適切な有機ガス用防毒マスクを使用して作業をすべきであったが、全体換気装置を設けず、換気がほとんど行われない状態で作業が行われたこと。(2) 有機溶剤作業主任者による適切な作業指示及び有機溶剤業務に従事する作業者に対する労働衛生教育も受けていないため、防毒マスクに関する正確な知識がなく、有機溶剤の濃度が0.1%を超える可能性があるにもかかわらず、ガスまたは蒸気の濃度が0.1%以下の大気中でしか使用できない直結式防毒マスクを使用し、防毒マスクの吸収缶の破過限度を超えてしまったこと。
対策
(1) 有機溶剤作業を行う場合には、有機溶剤作業主任者を選任し、その者の指揮のもとで作業を行わせること。(2) 有機溶剤業務に従事する作業者に対する労働衛生教育を行い、有機溶剤の危険性及びその対策を十分認識させること。
(3) 全体換気装置を設ける等、作業場の換気を十分行うこと。
なお、全体換気装置を使用する場合は、作業場の体積に応じた換気能力を有するものを選択すること。(注)
(4) 防毒マスクを使用する際には、表1に示すようにガス濃度等の使用条件にあったマスクを選択するとともに、息苦しくなった場合には、すぐに作業を中止すること等を留意の上使用すること。