井戸掘削作業における酸素欠乏症
業種 | その他の土木工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の土木工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.834
発生状況
この災害が発生した場所は、図に示すように、直径1.5mの井戸であり、掘削工事を開始してから、数日を経過している。災害発生当日、作業者A、B及びCの3名がこの井戸を引き続き掘削する作業に従事することとなり、作業中に生じる湧水はポンプで汲みあげることとした。なお、酸素欠乏危険作業主任者は選任されていなかった。
当日、午前9時から作業を開始したが、地表から14m堀り下げたところで、排水ポンプの汲みあげ能力以上の湧水が発生したので、汲みあげ能力のより大きいポンプと交換することとし、午後2時に一旦作業を中止した。
その後、午後3時30分頃、このポンプをウインチでつり上げるため、Aは、ロープをポンプに掛けるため、井戸の底に降りた。
Aは、ロープをポンプに掛けたものの、ポンプに寄りかかって動かなくなり、呼んでも答えがなかった。
Bは、Aを救出しようと、そのまま、井戸の中に降りて行ったが、その場で倒れてしまった。そのため、Cは、急ぎ、送風機を取り付けて送風し、その後、井戸の中に降りて行き、A及びBを井戸から引き出し、救急車を呼び病院に運んで手当をしたが、Bは蘇生したものの、Aは死亡した。
なお、災害発生後、測定を行った結果、硫化水素は検出されなかったが、酸素濃度は、地表から12mの地点で10%であった。
原因
[1] 酸素の溶解による無酸素化災害発生前にポンプを止めていたため、急に井戸水が大量に噴き出し、この大量の水の中に空気中の酸素が溶解した可能性
[2] 近隣潜函工事の影響
地層内に圧入された空気が水のない砂れき層を通過する際、無酸素化され、それが噴出したか、又は、既往の潜函工事の圧入空気が無酸素化されて砂れき層中に停滞していたのが、掘削につれ噴出した可能性
[3] 低気圧時の湧出
砂れき層の間隙を埋めていた間隙ガス(このガスは大部分が窒素であり、酸素はほとんど含まれていない。)が大気圧の低気圧化に伴い、井戸の内部に湧き出した可能性
等が考えられる。
その他、この災害が発生した人的な原因としては、
[1] 酸素欠乏危険場所についての関係者の認識が低く、酸素欠乏症等の原因及び防止措置等についての理解が十分でなかったこと。
[2] 酸素濃度の測定を実施しなかったこと。
[3] 作業場所を換気しなかったこと。
[4] 被災者を救出しようとして、空気呼吸器等を着用せず、災害現場に入ったこと。
対策
[1] 酸素欠乏危険作業主任者を選任し、その者に、その日の作業を開始する前に、空気中の酸素の濃度を測定させること。 [2] 空気中の酸素濃度を18%以上に保つように、換気を行いながら作業を行わせること。 [3] 送気マスク、空気呼吸器等の呼吸保護具等を非常の場合のために備え、非常の際は、それを着用させること。 なお、酸素欠乏症にかかった作業者を救出する際は、換気のみならず、空気呼吸器等を使用させて救出させることが不可欠である。 [4] 作業者に対し、酸素欠乏危険作業に係る特別の教育を行うこと。 なお、教育する内容は、次のとおりである。
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