硬質ウレタンフォーム施工中の酸欠災害
業種 | その他の建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建築工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.826
発生状況
災害は、公衆浴場のサウナ室の天井裏で、断熱・結露防止のためのウレタンフォームを吹き付け工事している際に発生した。天井裏の状態は、気積が約4.3m3で、隅に45cm角の点検孔があり、他は密閉されていた。内部は、4つの壁面及び天井面がスタイロフォーム打ち付け仕上げ、床面がグラスウール敷きでいずれも未塗装であった。ウレタンフォームの吹き付けは、この4壁面と天井面でその厚みは5cmの予定であった。
この工事は、X化学が請け負ったものであるが、実際の吹き付け作業は下請けのY社が行った。被災者はY社の従業員である。
災害発生当日は、8時30分にY社の作業者が現場に到着し、発注者から現場の説明を受けた後、元請け会社の立会い人とともに準備作業を行った。
作業方法は、駐車場のトラックにR液、I液(各200kg入ドラム缶)、コンプレッサー、加圧機をおき、そこから作業現場までホースを引いてエアガンで吹き付けを行うものであった。
準備作業を10時10分ごろ終了し、吹き付け作業を開始した。吹き付け作業は、Y社の作業者3人で、1人が10分ぐらいで交替して行う予定であり、最初に被災者であるAが行った。
10分ほどして、他の作業者が交替のため点検孔からAを呼んだところ、Aはふらついた状態であったため、手を貸して点検孔からはしご伝いに下に降ろした。Aは下で少し立っていたが、間もなくへたへたと座り込んでしまった。すぐに救急車が呼ばれ、病院へ入院し、休業1日の災害となったものである。
この作業は酸素欠乏の危険及びイソシアネート化合物による有害性があることから、元請けのX化学は、スパイラル風管付き電動送風機を用意していたが、出入口である点検孔が小さいためこの送風機を使用することができなかった。このため、代わりに中型タンク式掃除機による送風を行ったが、グラスウールの粉じん等が舞い、作業にならないため結局換気をせずに作業を行うこととなった。
なお、被災者Aは、防毒マスクを着用して作業を行っていた。
また、災害発生より4時間後に酸素濃度測定を行ったところ、通常よりやや低い20.5%であった。
気泡調整剤(フレオン11、CCl3F)、難燃剤等が混合されている。I液は、ポリイソシアネートが主成分である。
吹き付け方法は、R液とI液を加圧し、エアガンのノズル部で反応させ、発泡、吹き付けするものである(R液とI液との混合比はおよそ1:1である)。フレオン11は常温で液体であるが、2液が混合されたときの反応熱で気化し発泡する。
エアは、吹き付け作業後ノズル部でウレタンが凝固してしまうのを防ぐために、ノズル部に残った液を吹き飛ばすために使われるものである。
原因
(1) ウレタンフォームの吹き付け作業により発生したフレオン(ガス)により作業場所の空気が置換され酸素濃度が低下したこと。(2) 作業場所の換気を行わなかったこと。
(3) 作業中酸素濃度を継続的に測定していなかったこと。
(4) 酸素欠乏危険場所で作業を行う際に、防毒マスクを使用したこと。
防毒マスクは、有害ガスに対しては効果があるが、酸素欠乏には全く効果がない。
(5) 作業者に、酸素欠乏危険作業についての認識が乏しかったこと。
対策
(1) 作業場所の換気を継続的に行うこと。(2) 作業の性質上換気を行うことができないときは、呼吸用保護具を着用して作業を行うこと。
(3) 作業中酸素濃度を継続して測定すること。この場合、自動警報器付き測定器を使用することが望ましい。
(4) 作業者への酸素欠乏危険についての教育を徹底すること。