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労働災害事例

保冷庫内におけるドライアイスの気化による酸素欠乏災害

保冷庫内におけるドライアイスの気化による酸素欠乏災害
業種 その他の道路貨物運送業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:2人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.825

発生状況

災害の発生した事業場は、庫内を低温に保つ保冷貨物自動車や、冷凍機を備え付けた冷凍自動車を用いて食料品等を低温輸送することを業としていた。
 災害発生当日、被災者A、Bを含む作業者5名は午前9時30分頃から作業場内で発泡スチロールの箱に、肉製品とドライアイス(100g)を入れテープで止める箱詰め作業を午前中いっぱい行った。
 午後も引き続き箱詰め作業を続け、午後2時30分頃からは、保冷貨物自動車に箱詰めの終わった発泡スチロールの箱の積み込み作業を行い、午後3時10分頃終了した。
 積荷の状態は高さ6段、横に7箱、奥行き12箱で合計489箱(発泡スチロールの箱の大きさは、縦24cm、横29cm、高さ17cm)で、これは高さが保冷貨物自動車の3分の2、奥行きで4分の3を占めるものであった。
 配達先へは、被災者A、Bを含む4人で行くことになったが、運転席は3人乗りだったため、被災者Aが後ろに乗り込むこととなったが、Bも一緒に乗り込むことを申し出たため、A、Bを後部保冷庫内に乗せて午後3時12分頃目的地に向けて出発した。この時の保冷庫内の状況は、室内灯を点灯しており、冷蔵器(クーラー)のスイッチは切ってあった。
 被災者は、出発して2、3分で気分が悪くなり、保冷庫内の非常ブザーを押したが、スピーカーが保冷車の外側後部にあったため、運転席にいた2名は気づかないまま出発し、約8分後に目的地に着いた。運転手が保冷庫の扉を開いたところ、A、Bはぐったりして、話ができない状態になっていた。すぐに救急車で搬送し、手当てを受けたが、休業10日の災害となった。
 走行中、運転席の窓は閉められており、カーラジオがついていた。

原因

1. 発泡スチロールの箱の中のドライアイスが気化して二酸化炭素が発生し、保冷庫内の酸素濃度が減少し、酸素欠乏状態になったこと。
2. ドライアイスにより保冷庫内が酸素欠乏状態になることについて、事業者、作業者とも認識がなかったこと。
3. ドライアイスを使用して冷蔵を行っている保冷貨物自動車の保冷庫内(酸素欠乏危険場所)に、作業者を乗せて走行したこと。
4. 保冷貨物自動車の後部の扉は外側からロックすると、内側からは開かない構造になっていたこと。
5. 非常ブザーが設置されていたが、スピーカーが保冷車の後部にあるため、運転席までブザーの音が届かなかったこと。

対策

1. ドライアイスを使用して冷蔵を行っている保冷貨物自動車の保冷庫内(酸素欠乏危険場所)には、走行中に人を乗せないこと。
2. 非常ブザーの音が運転席にも聞こえるようにすること。
3. 保冷貨物自動車の後部の扉を内側からも開けられるような構造にすること。
4. 保冷貨物自動車の保冷庫内(酸素欠乏危険場所)での作業に従事する作業者に対し、保冷庫内の作業の危険性、庫内の酸素濃度の変化の状態及び危険を防止するための作業手順等に係る具体的内容について教育を行うこと。
 ドライアイスを使用する保冷貨物自動車の保冷庫内の酸素濃度については、表のような実験結果が出ている。
 なお、本災害は、保冷貨物自動車で配送先へ移動中に発生した災害であるが、ドライアイスを使用する保冷貨物自動車による荷役運搬作業を行う場合は、酸素欠乏災害を防止するために、荷積み、荷卸し作業時においても十分な対策を講じる必要がある。
 特に、荷卸し時においては、保冷庫内の酸素濃度が低下していることが十分に考えられるので、保冷庫の扉を開放してから、荷卸し作業を始めるまでに十分な換気を行うとともに、酸素濃度を測定し、酸素濃度が18%以上であることを確認しておくことが必要である。
 また、荷卸し作業時においても、
・ 作業者が換気されやすい扉付近から順に作業できるように留意すること。
・ 作業者が保冷庫内に立ち入るときには、誤って扉が閉まらないようにすること。
 に注意し、保冷庫についても、
・ 庫内からでも扉を開放できる構造にすること。
・ 庫外に対する警報装置を具備し、かつ、その機能を常に点検すること。
 が必要である。
 さらに、保冷庫内の作業を行うときには、第1種酸素欠乏危険作業主任者講習修了者を作業主任者に選任し、その者に作業に従事する作業者が酸素欠乏の空気を吸入しないように、作業の方法の決定、作業の指揮等を行わせるとともに、常時その作業の状況を監視し、異常があったときにただちにそのことを関係者に通報するための監視人を置くことが必要である。
 また、保冷庫内の作業に従事する労働者に対して、日頃から、酸素欠乏症についての知識、庫内作業の危険性、庫内の酸素濃度の変化及び危険を防止するための措置についての教育を実施することが肝要である。