焼却処分の前処理作業中に、フォークリフトの下部から出火し、火災
業種 | 産業廃棄物処理業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.809
発生状況
災害発生当日は、ドラム缶30本分の溶剤系の廃油を焼却処分することとなっており、午前8時30分頃からその前処理作業として、作業者3名がおがくずとの混合作業を行った。はじめに3名でドラム缶を開けた。次に、3名のうち2名が前処理作業場から廃油が流出しないようにおがくずで土手をつくる作業を、残り1名がアタッチメントとしてバケットを装着したフォークリフト(ガソリン車、最大荷重2トン、バケット容量1.2m3)を用いてドラム缶内の廃油をフォークリフトのバケット内に移し、その廃油を前処理場のおがくずに流し込む作業を行い、午前10時までにドラム缶30本分を流し込んだ。
廃油の流し込みが終わったところへ、別の場所での作業を終えた工場長が加わり、4名で前処理作業の続きを行うことになった。
工場長はバケット式フォークリフトを用いておがくず置き場からおがくずをすくい、前処理場内にまき散らす作業を、作業者3名は前処理場内のおがくずに流し込んだ廃油をスコップと足で混ぜる作業を行った。混ぜ終えたおがくずについては、工場長がフォークリフトを用いて、順次、前処理済置き場へ運んだ。
午前11時頃、工場長が前処理場の奥壁に向かい、おがくずをまき散らしながら前進し、停止した約5秒後にフォークリフトの下部から出火し、前処理場内部が火災となり、中で作業をしていた4名が火傷を負い病院に運ばれた。うち1名は、災害発生から6日後に死亡した。
原因
(1) ガソリンエンジン式のフォークリフトが点火源となり、アセトン、酢酸エチル、トルエン等の引火性の高い溶剤が含まれていた廃油から発生した蒸気に引火したこと(フォークリフトのどの部分が点火源となったかは特定されなかったが、エンジンからマフラーに至る高温の部分、マフラーから排出された煤等が点火源として推測された)。(2) 溶剤系の廃油とおがくずを混合する作業について、廃油の引火性等に配慮した作業標準が定められていなかったこと。
(3) 事業場ではフォークリフトを計5台(いずれも最大荷重1トン以上)所有していたが、これらのフォークリフトについて特定自主検査が実施されておらず、また、工場長を含めてフォークリフト運転技能講習修了者がいなかったこと。
対策
(1) 溶剤系の廃油とおがくずの混合作業を行う際には、ガソリンエンジン式のフォークリフト等点火源となる恐れのあるものを使用しないこと。溶剤系の廃油とおがくずの混合作業を行う際に使用する機械・器具については、防爆構造のものとすること。なお、フォークリフトを使用する場合には、防爆構造のバッテリー式フォークリフトを使用すること。
(2) 溶剤系の廃油とおがくずを混合する作業について、廃油の引火性、静電気その他の点火源対策等に配慮した作業標準を作成し、作業者に周知すること。
(3) フォークリフトの特定自主検査を行うとともに、フォークリフトの運転は有資格者に行わせること。