ガスオーブンの不完全燃焼で一酸化炭素中毒
業種 | パン、菓子製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.796
発生状況
本災害が発生した事業場は、製造工場と店舗を1カ所に置き、和洋菓子の製造・小売を行っている。災害発生は初夏で、当日は作り置きのきく和菓子類を終日(休憩時間込みで約9時間)製造する予定であった。始業時刻より作業者甲と乙、事業主丙の3名で、間口13.5m、奥行6m、高さ2.9mの作業場において作業を始めた。
作業は、小麦粉、卵などの材料から下地のスポンジを作り、これを電気オーブンとガスオーブンを用いて焼き、各菓子の種類に合わせて加工、製品化するものであった。作業に用いていたガスオーブンは、LPガスを用いる、ガス消費量毎時30,000Kcal、高さ1.7m、幅1.6m、奥行1.1mのもので、燃焼後の排気ガスを屋外へ排出するようなダクトを設けていないものであった。作業場の中には、燃焼ガスを発生させる機械等はこれのみであった。当日の気温の関係から、作業場の天井付近に設置してあるクーラー(一般家庭用で、換気機能は備えられていないもの)を稼働させ、作業場に3カ所設置している換気扇を回さず、窓、出入口を閉め切って作業をしていた。
正午から1時間の休憩をはさみ、午後5時ごろまで作業をした。この間、オーブンの火を、休憩中に消したのみで、換気扇を止めたまま、窓も閉めたまま、出入口は入退室時に開閉しただけであった。
午後5時ごろ、3名同時に頭痛、吐き気など体の不調を訴えたため病院に駆け込んだところ、一酸化炭素中毒と判明した。そのうち、特に症状の重かった甲が休業1日となった。このタイプのガスオーブンは、1,000KcalのLPガスを燃焼するのに0.93m3の空気量を必要とするものであった。また、通常LPガスが完全燃焼するためには、20%〜50%増の過剰空気が必要で、このガスオーブンで計算すると、1時間完全燃焼させるのに約33〜41m3の空気が必要とされる。
災害のあった作業場の気積は約240m3で、完全燃焼に必要な空気の5〜7時間分だけの気積しかなかった。
原因
(1) 狭い工場内で、換気扇を止め、窓および戸を閉め切ったまま排気装置のないガスオーブンを使用したこと。(2) ガスオーブンの使用上の注意事項の確認を怠ったこと。
対策
(1) ガスオーブンを使用する際は、ガスオーブンの排気装置を使用して排気を外に放出するか、または、換気扇を稼働させる、窓を開放する等の方法により、屋内に一酸化炭素が滞留しないようにすること。なお、排気装置と換気扇を同時に使用すると、屋内の空気の圧力が外気より低くなり、排気すべきガスが逆流して、一酸化炭素が屋内に充満する事態を招くことがあるため、注意する必要がある。(2) 設備を安全に利用するための注意事項について確認するとともに、作業者に対し周知を図ること。