アセチレンガスを用いた溶断作業で出火
業種 | その他の建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建築工事 | ||||
災害の種類 | ||||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.795
発生状況
災害は、鉄筋コンクリート造り3階建て倉庫解体工事において、倉庫1階屋内に設置されていた鉄骨およびデッキプレートで構成された保管棚をアセチレンガスを用いて溶断作業を行っているときに発生したものである。当日は、三次下請業者所属の現場責任者により作業分担等の打合せがされており、保管棚の解体は三次下請業者の日雇い作業者3人が行うよう指示されていた。また、作業にあたっては次の注意事項が指示されていた。
[1] 倉庫1階屋内での作業は密閉に近い状態の中で火気を使用するため、水道ホースを這わせる。
[2] 消火器、防火用バケツを設置する。
[3] 作業前に床に水をまく。
[4] ガス溶断の煙が出て換気が悪いので適時休憩する。
保管棚の解体を行う日雇い作業者の3人は、過去においても当該事業場でアセチレンガスでの溶断作業を行っていたので、取扱いは慣れているとの判断から作業場所の指示や作業方法についての具体的な指示は行われなかった。
3人は、アセチレンガスボンベと酸素ガスボンベそれぞれ3本を、倉庫屋外に設置している枠組足場に番線で連結しゴムホースと吹管を屋内に引き込み、保管棚(高さ2.7m)を足場として各人の判断による作業手順で足元の保管棚の溶断にあたっていた。
昼休みの後、3人は溶断作業を再開していたが、間もなく1人の作業者の左側壁面から出火が起こった。
この作業者は他の2人の作業者に避難するよう声をかけいったんドアから外に出て、消火しようと水道の蛇口にホースを取り付け水を出し、再びドアを開けようとしたが、黒煙が勢いよく吹き出してきたためそのまま退避することとなった。
その後消防署が消火活動を行ったが、他の2人のうちの1人が現場で死んでいるのが発見された。
災害発生現場となった倉庫は、低温貯蔵庫として使用されていたもので壁には全面に断熱材(硬質ウレタンフォーム)が吹き付けられていた。しかし、作業員に対しては壁に吹き付けてある断熱材が燃えやすいものである等の説明はされていなかった。
また、倉庫内は薄暗く、高さが2.7mの作業場所から容易に下りることのできる有効な昇降設備を備えていなかった。
日雇い作業者3人のガス溶断の資格に関しては、三次下請業者の常用作業者が口頭で確認しただけであり、資格証の確認は行っておらず実際には3人とも無資格であった。
なお、1階の保管棚をアセチレンガスで解体する方法は、現場責任者が前日1人で決定し、関係者には報告されていなかった。
原因
[1] 作業場所におけるウレタンフォームの有無等火災の危険性についての調査の実施、およびこれに基づく関係事業場への的確な安全対策が指示されていなかったこと等、元方事業者の現場管理、指導が不十分であったこと。[2] 火災の防止に配慮されていない施工方法が下請の現場責任者の単独で決定され、元方事業者に報告されなかったこと。また、これにより安全対策について十分な検討がなされないまま作業を開始したこと。
[3] ウレタンフォームが吹き付けてある場所で、アセチレンガスによる金属溶断作業を行わせたこと。
[4] 資格を有しない日雇い作業者に、アセチレンガスによる金属溶断作業を行わせたこと。
[5] 雇い入れ時教育等安全教育が不徹底であったこと。
対策
[1] 元方事業者が主体となって現場の施工計画、施工管理および指導を行い、作業手順書の作成や雇い入れ時教育等を関係請負人に対し周知徹底させること。関係請負人はこれらを順守し、自らも積極的な安全管理を実施すること。[2] 元請事業者および関係請負人は、決定事項等が周知されるよう連絡体制を確立すること。
[3] ウレタンフォーム等易燃性のものが吹き付けてある場所では火気の使用を禁止すること。やむを得ない場合には、火花の飛散等を防止するため不燃材料、不燃性を有するシート等で遮熱、遮へいすること。
[4] 資格を有する作業を行う作業者については確実に資格確認を行い、無資格者に当該作業を行わせないこと。