金属部品洗浄装置内のトリクロロエチレンが蒸発し作業者が急性中毒
業種 | その他の電気機械器具製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.787
発生状況
本災害が発生した事業場は、空調装置などの製造を行っており、災害は、空調装置の熱交換器などの金属部品をトリクロロエチレンで洗浄する工程で発生した。洗浄工程は、温浴、冷浴、蒸気浴、エアブローといった一連の流れであり、洗浄部品の脱着と洗浄装置の起動以外は、洗浄装置内の全自動運転で行われる。被災当日、洗浄装置の駆動軸がはずれたため、社内の機械修理担当課に修理を依頼した。修理に当たって、修理担当者は、洗浄装置の局所排気装置を稼働し、洗浄装置の保温スイッチを切った状態で洗浄装置内のトリクロロエチレン液(約7500l)の液抜きを始めた。約4時間後、液抜きが完了したのを確認し、局所排気装置の稼働を止めて現場を離れた。
その10分後、洗浄装置の近くにいた作業者が、洗浄装置の上部窓より白い蒸気が流出しているのを発見した。この上部窓は、液抜き状態の確認のため開放されていたものである。作業者は、急いで局所排気装置のスイッチを入れ、かつ、装置横のシャッターと建物の天窓を開け、近くにいた作業者2名とともに避難し、修理担当者に連絡した。
修理担当者が再度点検したところ、洗浄装置の保温スイッチが入ったままになっており、トリクロロエチレンの残液が加熱され蒸気となり流出していた。スイッチを切ると、少し経過した後、蒸気の流出は止まった。
その後、現場付近の蒸気の除去を行い、特に異常が認められなかったので、約30分後作業が再開された。
一方、蒸気が流出していた時間帯に、約35m離れた場所で金属部品の切削作業を行っていた被災者は、その後、気分がすぐれず嘔吐感があったので帰宅したが、自宅で倒れ入院した。
被災者は、シャッターと天窓が開けられたことにより、上部窓より流出したトリクロロエチレンの蒸気が風に流され、被災者の頭上に対流し被災したものである。
原因
(1) 修理担当者が洗浄装置の保温スイッチの切断を十分に確認しなかったこと。(2) 洗浄装置におけるトリクロロエチレン溶剤について、液抜き等の作業手順が明確に定まっていなかったこと。
(3) 事故発生時に建物内で作業している作業者全員に避難の指示がなされなかったこと。
対策
(1) 洗浄装置におけるトリクロロエチレン溶剤について、作業手順を明確にした作業標準を作成し、スイッチの確認等作業者に十分周知徹底すること。(2) 事故発生時における避難場所の周知等、定期的に避難訓練を実施するなどにより、緊急時の対応について作業者に徹底すること。