フロンガスによる酸欠
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.773
発生状況
本災害は食品工場の冷凍庫に設置された機械室で発生した。被災者は冷凍機等の機械を保守管理する会社の作業者であり、災害発生当日は食品工場から冷凍機の調子が悪いとの連絡を受け、点検修理を行っていた。災害が発生した場所は冷凍機が設置してある機械室である。この機械室は地下にあり、出入口1カ所以外には窓等がなく、換気のための設備も設置されていないものである。内部は幅3.4m、奥行き7.5m、高さ2.1mの大きさであり、フロン22を冷媒とする冷凍機が2台設置してある。
災害発生の前日に被災者が冷凍機を点検したところ、フロンの配管に混入した水分が凍結することにより、配管が詰まってしまうことが異常の原因であることが判明した。そのため、フロンガスを一旦機械から抜いて水分を除去する必要があり、災害発生当日の朝8時半頃から1日をかけ、その作業を行うこととなった。
作業の手順としては、冷凍機のコンプレッサーからフロンガスを地上のボンベに抜き取り、乾燥剤入りのフィルターを交換した後、水分の混入していないフロンガスを充填することとなっていた。
災害発生当日、被災者は予定通り作業を始めており、正午には昼食を届けに来た食品会社の者により無事であることが確認されているが、午後5時40分に様子を見に来た食品会社の者により、倒れて意識のない状態で発見された。すぐに消防署の救急隊員により機械室の外に運び出されたが、すでに死亡していた。
被災者が発見された際には、冷凍機の乾燥剤入りのフィルターは交換してあり、コンプレッサーの下部にあるオイル抜き用のバルブからコンプレッサーの潤滑用のオイルを抜いた状態であった。また、昼食には手が付けられていなかった。
フロン22は無味無臭で刺激性もなく、比重は空気を1とすると3であり、床面付近に滞留しやすいものである。
フロンガスを抜き取る作業の際には、冷凍機およびその配管内部のすべてのフロンガスをボンベに回収することはできず、一部その場に放出することとなる。そのため、今回の災害の場合も同様に一部のフロンガスが機械室内に放出され、床面付近に滞留し、それに気付かないで床に敷いたダンボールの上に仰向けに寝た状態で作業をしていた被災者が、フロンガスにより酸素欠乏となったものである。
原因
(1) フロンガスが滞留し、酸素欠乏となるおそれのある作業であるのに、換気を行っていなかったこと。(2) フロンガスを取り扱う作業の危険性、災害防止のために必要な措置の教育が不十分であったこと。
対策
(1) 自然換気が十分になされない場所においてフロンガスを取り扱う作業を行う場合には、換気を行いフロンガスが滞留しないようにすること。(2) 従事する作業者に対し、取り扱う物質の危険性、災害防止のために必要な措置等の教育を十分に行うこと。
(3) できるだけ複数で作業を行い、異常発生の際に適切な対応がとれるようにすること。