化学薬品が水と反応して、ドラム缶が破裂
業種 | 道路貨物運送業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の危険物、有害物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 破裂 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.765
発生状況
本災害は、化学工場で用済みとなった化学薬品の輸送を依頼された運送業者が、引き取ったドラム缶入り化学薬品をトラックターミナルに仮置きしていたところ、この化学薬品がドラム缶内にあった水分と反応して、ドラム缶が破裂したものである。この化学薬品は、通常MDIと呼ばれており、メチレンビスフェニルイソシアネート(モノメリックMDI)と類似物質であるポリメリックMDIが混合された液体で、ウレタンフォームの原料等に使用されるが、水と接触することにより反応して、二酸化炭素を発生する性質を有している。
A化学では、ウレタン製品の製造のため、MDIを使用していたが、モノメリックMDIとポリメリックMDIの成分比が異なるMDIを使用することになったため、今まで使用していたMDIが不要となった。しかしながら、このMDIは皮膚などに対して刺激作用を示すとともに、燃焼させるとNOxやSOxを発生させるため、自社内での処理が困難な物質であった。そのため、販売元であるB工業に連絡したところ、トラックで送り返せば、B工業で処理する旨の回答を得た。
そこで、A工業では、災害発生当日、午前11時頃からMDIを200l入りのドラム缶3本に分けて入れたところ、それぞれ約8分目程度になったため、蓋を閉め、出入りの運送業者であるC運輸に対して、B化学までのトラック輸送を依頼した。
C運送では、運送スケジュールの関係から、午後3時過ぎに、いったんトラックでドラム缶を自社のトラックターミナルまで運んでおき、当日の夜にB化学まで輸送する予定であった。
ところが、午後5時頃、トラックターミナルで突然ドラム缶の1本が破裂し、下側の蓋板を残して、ドラム缶の本体はトラックターミナルのスレート屋根を突き破り、約10m先まで飛んだ。
破裂時には、近くで2名が作業中であったが、幸い負傷者はいなかった。
内部にあった水分がMDIと反応して発生した二酸化炭素が、密閉されたドラム缶内の圧力を上昇させ、ドラム缶の破裂に至ったものとみられる。
原因
[1] MDIを入れたドラム缶は、もともとMDI用のものではあるが、空の状態で屋外に保管されていたものであり、その際、蓋を緩めたまま、上にビニールシートをかけておいたため、昼夜の寒暖差により結露した水滴または雨水がドラム缶内に少量溜まっていたものとみられる。[2] A工業では、MDIを水と接触させてはいけないことを知っており、MDIをドラム缶に入れる際にも乾いたジョウゴを使用するなどの措置を講じているが、ドラム缶内に水等の異物がないことの確認を怠ったこと。
対策
[1] MDIのように水等と接触させることにより、気体を発生させたりして容器の破裂の原因となる物質をドラム缶等の容器に入れる際には、当該容器の内部に水等の異物がないことをあらかじめ確認すること。[2] また、容器に入れて、保管、輸送等を行う場合は、空気中の湿気と反応しないよう堅固な密閉容器を使用するとともに、容器内の空気を乾燥窒素により置換しておくこと。
[3] 化学薬品を購入、運搬する場合は、化学物質等安全データシート(通称MSDS)により、当該物質の危険・有害性を把握するとともに、貯蔵、取扱い上の注意を遵守すること。