しょう油タンクで酸欠死
業種 | その他の食料品製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.749
発生状況
しょう油原液貯蔵タンクの清掃作業において、タンク内壁を掃除するためにタンクに入った作業者Aが、酸素欠乏症に罹災し、同人を救出しようとしてタンク内に入った事業主も酸素欠乏症に罹災し、死亡したものである。災害発生当日、事業主は作業者A、B、Cの3名に生揚げタンク(しょう油原液貯蔵タンク)の掃除を指示し、事業主および作業者3名は、午後3時15分より作業を開始した。
作業は、まずタンクの中に残っているしょう油原液の上澄みを、ポンプにより隣接する生揚げタンクに移し換えた後、タンク底部のしょう油として使えない原液を、ポンプによりポリバケツに汲み上げた。
その後、Aがタンク内の掃除をするため、タンク内に入ろうとしたとき、事業主は「タンク内に空気を送ったほうがいいよ」と換気をするよう促した。しかし、Aは換気を行わず、タンクのマンホール口からタンク内に入った。Bが、タンク内に入ったAに掃除道具を渡そうとすると、Aは目の焦点が合わずぼんやりと立っていたので、Bは直ちに、事業主に「Aさんが何か変よ」と伝えた。
事業主はAを救出するため、無防備で慌ててタンク内に入った。その際、タンク内に空気を送って換気するような指示もしなかった。タンク内に入った事業主は、Aの腰を押し上げ、Cがマンホール口より手を引っ張り上げるようにして、救出しようとしたが、Aの手にはもろみが付着していたため、手が滑り救出できなかった。
Cは、事業主と2人だけでは救出できないので、消防署が来るまで待つことにし、その間、タンク内に空気を送ろうと考えた。しかし、コンプレッサーより空気を送ろうとしたが、空気を送るホースがマンホール口まで届かず、そこで、ホースを継いで延長しようとしたが、ホースをジョイントするパイプが見当たらず、結局コンプレッサーにより空気を送ることができなかった。
約50分後に消防署のレスキュー隊が到着し、両名を救出したが、Aは意識不明、事業主は被災6日後に酸素欠乏症により死亡した。
災害発生時は、酸素濃度を測定していないため、不明であるが、災害発生約1時間後に測定すると、災害の発生したタンク内の濃度は20.0%であり、隣接する同様の生揚げタンク内の濃度は1.0%であった。
原因
(1) 酸素濃度を測定することなく、酸素欠乏危険場所であるしょう油タンク内に立ち入らせたこと。(2) タンク内に立ち入らせる際、換気を行わなかったこと。
(3) 空気呼吸器等の避難器具等を備えていなかったこと。
(4) 酸素欠乏危険作業主任者(事業主)が、作業主任者としての災害防止のための必要な職務を行わなかったこと。
対策
(1) 酸素欠乏の恐れのある箇所へ立ち入らせる前に酸素濃度を必ず測定すること。(2) 酸素欠乏危険場所へ立ち入らせる際は、酸素濃度を18%以上に保つよう十分換気を行うこと。
(3) 酸素欠乏危険場所で作業に従事させるときは、空気呼吸器、繊維ロープ等の救出に必要な避難用具を備えること。
(4) 酸素欠乏危険作業主任者は、作業者が酸素欠乏の空気を吸入しないような作業方法を決定し、作業者を指揮すること。