職場のあんぜんサイト

  1. ホーム
  2. 労働災害事例
  3. 労働災害事例(検索結果詳細)

労働災害事例

乾燥機で、有機溶剤が爆発

乾燥機で、有機溶剤が爆発
業種 クリーニング業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 乾燥設備
災害の種類(事故の型) 爆発
被害者数
死亡者数:− 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.744

発生状況

事故の発生した事業場は、クリーニング業で、工場においてドライクリーニングなどを行っている。
 この事故は、ドライクリーニングの洗浄液に使用していた有機溶剤が乾燥機のダクトの中で爆発し、ダクトが損傷するとともに、乾燥機内にあった洗濯物が焼損したものである。
 この工場で行っているドライクリーニングでは、洗浄液にパークロロエチレン(引火性なし、沸点121℃)を用いる方法とミネラルターペン(引火点約40℃で危険物、沸点約150℃)を用いる方法の2種類の方法をとっており、洗濯物の種類によって使い分けをしている。パークロロエチレンを用いる方法は、洗浄、絞り、乾燥を1台の洗浄機で行い、ミネラルターペンを用いる方は、洗浄機で洗浄、絞りを行ったのち、乾燥は別の回転ドラム式の乾燥機で行う方式になっている。事故が発生したのは、後者のほうである。
 災害発生当日、作業者Aは、作業手順どおり、膝掛け毛布40枚(ポリエステル製、約45kg)を洗浄機に投入し、自動洗浄を開始した。洗浄液はミネラルターペンである。約30分後に洗浄、絞りが終了したため、洗浄液を加熱乾燥させるため、毛布を乾燥機に投入後、乾燥機のスイッチを入れ、自動運転状態にした。Aは、別の作業を行うため乾燥機のある部屋を出ていったが、約5分後に爆発が発生し、ダクト等が破損し、また、乾燥機内部の毛布およびダクト内などにたまっていた繊維くずが燃えた。幸い、部屋には人がいなかったため人的被害はなかった。
 爆発は、乾燥を行っていた毛布(乾燥開始時にミネラルターペンを約10kg含む)から発生したミネラルターペンの蒸気が空気と混合して、爆発性混合気を形成していたところへ、何らかの原因で着火、爆発したものである。着火源は、静電気によるものとみられる。

原因

[1] 洗濯をしていた毛布がポリエステル100%であり、静電気が発生しやすい材質であったが、特段、静電気の発生、帯電防止のための措置を行っていなかったこと。
[2] ダクト等の内部の清掃が不十分であったこと。このため、爆発の後、ダクト内に堆積していた繊維くずに着火し、火災が発生した。
[3] 静電気等による爆発・火災の危険性についての作業上の注意事項等、安全教育が不十分であったこと。

対策

[1] 乾燥設備作業主任者を選任し、その職務を行わせること。
[2] 爆発孔を設けるなど危険物乾燥設備として求められている構造を満足するものとすること。
[3] 1年以内に1回定期的に自主検査を行うこと。などの措置を講ずることはもちろんのこと、
[4] 帯電防止服、同作業靴等を使用すること、作業床面の導電性を高めること等により、静電気の発生、帯電を防止すること。
 なお、乾燥前に静置する時間を設けることにより、静電気を減少させることができるため、洗濯物を乾燥機に入れた後、数分程度(2〜4分)の静置時間を設けることも有効である。
[5] 設備の清掃を行い、繊維くず等を除去すること。
[6] 静電気の除去を含め、乾燥設備に係る爆発・火災防止のための教育を十分に行うこと。
[7] 洗濯物の材質等を考慮し、適切な洗浄液を選択すること。
 等の措置を講ずることが必要である。
 なお、パークロロエチレンは第二種有機溶剤、ミネラルターペンは第三種有機溶剤であるので、上記爆発・火災防止対策のほか、労働衛生上の対策も合わせて講ずる必要がある。