アルゴン溶接後のタンク内における酸欠
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.740
発生状況
本災害は、配管をアルゴン溶接した後、その配管とつながる気泡分離器の中に入ったところ、酸欠で気泡分離器内で倒れ、死亡したものである。該当事業場は、食品工場の構内下請けとして各種タンク等の製造、改造工事を行っている。災害発生当日は、直径7.7mの図のような発酵タンクの内部にステンレス製の直径1.2mの気泡分離器を取り付ける改造工事を行っていた。
災害発生当日午前9時ごろ、酸素欠乏危険作業主任者である作業指揮者がタンク内部の酸素濃度測定を行い21%であることを確認したのち、被災者と2名で気泡分離器の下部の6インチの配管をアルゴン溶接する準備作業にとりかかった。アルゴン溶接は溶接部の品質を良くするため、溶接箇所の周辺をアルゴンガスの気体で満たし、アーク溶接を行うものである。この作業では、配管内にアルゴンガスを満たした状態で[A]部の溶接を行うために、配管の[B]と[C]にグラスウールを詰めた。その際、気泡分離器内の酸素濃度の測定は行わず、呼吸用保護具も着用していなかった。なお、タンク内で作業を行う際はタンク内部全体をブロアで換気していた。
10時半より、アルゴンガスボンベのバルブを開け配管内にアルゴンガスを注入しながら溶接作業を1時間程行い、ボンベのバルブを閉め、[C]のグラスウールを取り除いた。このアルゴン溶接では、配管内注入に約900l、溶接作業で約600lのアルゴンガスを消費した。
昼休みを挟んで午後1時より、[B]に詰めていたグラスウールを取り除くよう指示を受けた被災者は、縄ばしごを伝って気泡分離器内の底へ降りた。この際も気泡分離器内の酸素濃度の測定は行わず、呼吸用保護具も着用しなかった。被災者が出てこないので中をのぞきにいったところ死亡しているのが発見された。
原因
[1] 気泡分離器の配管のアルゴン溶接終了後、気泡分離器内に入るのに酸素濃度の測定をせずに気泡分離器内に入ったこと。[2] タンク内部全体の換気は行っていたものの、気泡分離器内部の換気は行っていなかったこと。
[3] タンク等の内部で作業を行う作業者に対して、酸素欠乏症に関しての特別教育を行っていなかったこと。
対策
[1] 不活性ガスを用いて溶接した後、その付近のタンク等に入る場合は、その中の酸素濃度を測定し、安全を確認すること。[2] タンク等の内部に入るときの措置として、十分な換気を行うこと。
[3] タンク等の内部で作業を行う作業者に対して、酸素欠乏に関しての特別教育を実施すること。