ガスバーナーの火が接着剤に引火
業種 | その他の建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 火災 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建築工事 | ||||
災害の種類 | その他の爆発・火災等 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.729
発生状況
本災害は、学校校舎改築工事現場において、校舎4階ベランダ部分の防水工事のため、ベランダで有機溶剤含有(溶剤の主成分−ノルマルヘキサン、アセトン、トルエン)の接着剤を塗布していたところ、同じベランダにおいて水分を乾燥させるために使用していたプロパンガスのバーナーの火が接着剤に引火し、その火が被害者の作業服に燃え移ったものである。災害発生当日までに、校舎の工事は内装・外装の仕上げ工事の段階になっており、当日は、4階ベランダ部分については、A建築が防水工事を行うことになっていた。
防水工事の手順は、
(1) コンクリート床面および断熱材(ポリエチレンシート)に接着剤を塗る。
(2) 接着剤を塗った側を下にして断熱材をコンクリート床面に張り付ける。
(3) 床面に張り付けた断熱材の上の面に、接着剤を塗る。
(4) 防水シートをその上から、張り付ける。
となっている。
ところが、前日に降った雨がベランダに溜っていたため、その箇所の水を除去する必要が生じた。そこで、A建築の職長甲は、プロパンガスバーナーの火でコンクリートの床面をあぶり、乾かすことにした。
ベランダは建物の北側から東側にかけてL字型に設けられており、職長甲は北側ベランダの端から順にガスバーナーで床面をあぶって乾かしていき、一方、作業者の乙と丙は、職長甲が乾かした後の床面に接着剤を塗る作業を始めていた。
床面を乾かす作業が東側ベランダに移り、接着剤を塗る作業が約4m分済んだとき、ガスバーナーの火がベランダの上を走り、接着剤が塗られた場所に引火した。作業者の乙と丙は逃げたが、作業服に引火し、乙は火傷で死亡、丙も重症を負った。
原因
[1] 有機溶剤を含有する接着剤を塗布する作業を行っているそばで、火気を使用したこと。[2] 作業場所が、四方を建物本体またはコンクリートの塀で囲まれた通風の不十分な場所であったため、有機溶剤が滞留しやすかったこと。
[3] 作業者に対し、有機溶剤による爆発火災の危険性についての教育が十分行われていなかったこと。
対策
[1] 有機溶剤を含有する接着剤の塗布作業中等、爆発や火災の発生するおそれのある場所において、火気を使用しないこと。[2] また、接着剤が乾ききらないうちで、同様のおそれがある場合には、やはり、火気を使用してはならない。
[3] 有機溶剤を使用する作業を行う場合は、作業場所の状況等に応じ、また、気温、風等も考慮に入れて、通風、換気等の爆発・火災防止のための対策を講じなければならない。
[4] 有機溶剤を使用する作業に新たに作業者を就かせるときは、有機溶剤中毒の予防をし、爆発・火災を防止するために必要な事項について教育を行わなければならない。