ビル新築工事における有機溶剤中毒
業種 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.726
発生状況
災害の発生した工事は、新築ビル建設工事においてウレタン塗料をコンクリートの壁面に塗り、防水加工を行うものである。災害当日は、ドライエリア(建物の地下室に隣接する空間)の防水工事を行っていた。作業手順は、壁面に、下塗り塗料、防水剤、仕上げ剤を順に塗布し、乾燥させるものであった。実際の作業はアルバイトのA、Bの2名が行い、防水工Cは現場の作業指揮にあたっていた。Cはアルバイトの2名に対して、ドライエリアの側面に、床面より約1.5mの高さまで各塗料を塗布するよう指示していた。
アルバイトの2名は下塗り剤(キシレン40〜50%含有)をローラー刷毛により塗布する作業を開始した。2名は10分ごとに交代し、作業時以外は地上で待機するよう指示を受けていた。最初にAがドライエリア内に入って10分程度塗布の作業を行い、地上に戻ってきた後にBが入り、作業を開始した。
作業開始後10分を経過して交代の時間になってもBが地上に現れないため、おかしいと思ったAはドライエリア内に入った。そこで、ドライエリア内でBがタラップにもたれかかり、ぐったりしているのを見つけた。すぐに、Aは作業指揮者のCを呼びに行った。Cはドライエリアに入り、ロープでBを縛り、地上にいるAと作業立会人Dがロープで引き上げようとした。ところがCも気分が悪くなり、横たわってしまった。Aはドライエリアの中に入り救出を試みたが、同じく気分が悪くなり、横たわってしまった。これを見たDは救急車を呼びに行った。AとCは5分位で起き上がり、自力で地上に出た後、ロープで縛られたままの状態になっているBを引き上げた。その後AとBは回復が思わしくなかったので、救急車で病院に運ばれた。
原因
[1] 当該作業場に全体換気装置を設け、送気マスクや有機ガス用防毒マスクを備え、作業に従事する作業者にそれらを使用させるなどの措置を講じなかったこと。[2] 有機溶剤作業主任者技能講習を修了したもののうちから有機溶剤作業主任者を選任し、作業の指揮に当たらせなかったこと。
[3] 現場にいた作業者が、有機溶剤の有害性について十分な認識がなかったこと。
対策
[1] 通風が不十分な場所において有機溶剤等を用いる作業を行う場合は、短時間または臨時の作業であっても、作業時間管理を行うといった消極的な方策を取ることなく、必要な換気装置を設け、作業者に必要な保護具を着用させることなど有機溶剤中毒予防規則に定められた措置を講じること。[2] 有機溶剤作業主任者を選任し、直接作業指揮に当たらせること。
[3] 作業者に対して有機溶剤作業に関する危険・有害性、保護具の使用法等について十分な教育を行うこと。