重油を入れてあったタンクの内部で発生した酸素欠乏症
業種 | その他 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建設工事 | ||||
災害の種類 | 酸欠 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.722
発生状況
本災害は、コンクリート床下に埋設された重油タンクの漏洩検査の準備作業中に、タンク内で酸素欠乏症となって倒れた配管工事業を営む事業者Aを救出するため、タンク内に降りた甲工業の作業者Bが同じく酸素欠乏症となったものである。準備作業の概要は、マンホール上部のコンクリートはつり工事、マンホールのパッキンの交換、送油管の閉管等を行うものであり、Aは二次下請けとして配管工事関係を、甲工業も同じく二次下請けとしてコンクリートはつり工事を請け負っていたものである。
災害発生当日、甲工業の3名の作業者がマンホール上部のコンクリートのはつり作業を終えた後、Aは長期間閉じられたままだったマンホールのふたを開けて、作業を始めた。送油管の閉管は、タンクの外からタンク内の送油管を抜いて、管の端を詰めることになっていたが、Aはこの作業が面倒であったため、そのままタンクの中に入り、送油管の先端に取り付けてある除水器を取り外す作業を始めた。
すぐに、タンクの中から「空気を入れたほうがいいかなあ」という声が聞こえてきたので、甲工業の作業者3名は、タンクの外からコンクリートのはつり作業に使ったコンプレッサーにホースを取り付け、タンクの中に送気しようと準備に取りかかったが、このとき、Aが意識を失い倒れた。まもなく、Aの顔に直接空気を当てたところ、Aは意識を回復し上半身を起こしたが、再び、意識を失い倒れた。
そこで送気を続けながら、甲工業の作業者Bが、腰にロープを巻き付けてタンクの中に入り、Aを救出したが、今度はBが自力で外に出られなくなったので、外にいた甲工業の作業者2名で、ロープを引き上げ、Bを救出した。
AとBは、近くの病院に運ばれ、酸素欠乏症と診断された。
なお、災害の発生当日、タンクのマンホールのふたを閉じ、3日間経過後、タンク内の酸素濃度を測定したところ、17.5%であった。
原因
[1] タンク内壁の酸化で、タンク内部が酸素欠乏状態になったこと[2] Aが予定されていた作業行動を取らなかったこと
[3] タンク内部の酸素濃度を測定せず、また換気を行わなかったこと
[4] Aの救出にあたって、空気呼吸器等を使用しなかったこと
[5] AおよびBに、酸素欠乏危険作業についての知識がなかったこと等。
対策
[1] 酸素欠乏危険作業を行うときは、酸素濃度の測定、換気の実施、作業主任者の選任等法令に定められた措置を講じること[2] 酸素欠乏危険場所に隣接する場所で作業を行うときは、酸素欠乏症の発生のおそれのない作業マニュアル(標準)を策定し、これを徹底するとともに、作業者が酸素欠乏危険場所に立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい場所に掲示すること