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労働災害事例

害虫駆除のため殺虫剤を散布中、有機りん中毒

業種 その他の卸売業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:2人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.710

発生状況

災害発生当日、午前8時20分頃、事業者Aは、被災者B、Cをトラックに同乗させ、事業場を出発し、午前9時少し前に本件災害発生場所であるごぼう畑に到着した。
 午前9時過ぎからB、Cの2名で手分けをして、害虫アブラムシを駆除するため、殺虫剤(有機りん化合物のエチルチオメトンを5.0%含有する粒剤)の散布作業を開始した。
 まず、殺虫剤(紙袋3kg入)を、散布機(携帯用)の容器内に投入し、散布機のひもを首にかけて、身体の前面にぶらさげるようにした。
 次に散布機のハンドルを右手で回しながら畑の中を4m間隔で前方に歩き、ごぼうの葉の上に均一に殺虫剤を散布していった。
 途中10時から30分休憩を挟み、12時まで散布を行った(午前中の散布面積は約18000m2、畑全体の約3分の1であった)。
 なお、午前中、Aは現場でB、Cの2名に散布要領を指示しながら現場を監視していた(午後は、現場を離れた)。B、Cの2名は、畑の近くの木かげで昼食をとった後、午後1時30分から作業を再開し、途中3時から30分休憩を挟み、午後5時まで散布作業を行った。当日1日で、畑全体約55000m2の殺虫剤散布作業を終えた。当日の殺虫剤の使用量は、2名で、合計240kgであった。
 上記作業中、B、Cの2名の服装は、長袖シャツ、長ズボンに不浸透性の保護手袋(ゴム製)・ゴム製長ぐつ、また帽子を着用していたが、腕まくり等をして、手、腕および顔面を露出させていた。なお、当該事業場敷地内には、洗身設備、更衣設備および洗濯のための設備が設けられていたが、B、Cの2名が散布作業をしていた当該農地および当該農地に近接した場所には、これらの設備は設けられていなかった。また、作業途中、作業終了直後における身体の洗浄およびうがい等はなされていなかった。
 当該事業場の倉庫には簡易防じんマスクが保管されていたが、当該マスクは、液体の殺虫剤を噴霧器により散布する作業のために使用していたもので、本件有害物の散布作業に関しては、呼吸用保護具は使用していなかった。
 なお、当日の天候は晴れで、最高気温は32℃前後であった。
 午後5時頃、Aが本件災害発生場所(ごぼう畑)に到着し、B、Cをトラックに同乗させ、事業場に向かった。事業場到着時刻は午後5時40分頃であった。
 B、Cの2名は、シャワーを浴び、午後7時30分頃夕食を取った。
 夕食後、午後9時頃、B、Cは身体の不調を感じてきた。夜11時頃、B、Cとも我慢できなくなり、Aに体調が悪いことを連絡し、救急車で病院に運び込まれ診察を受けた結果、B、Cの血液中からエチルチオメトンが検出され、有機りん中毒と診断され、入院した。

原因

[1] 有効な呼吸用保護具の備付けおよび使用がなかったこと。
[2] 保護衣等の適切な着用をしていなかったこと。
[3] 作業者に、作業途中、作業終了後に洗身、うがい等を行わせるための設備を当該農地または、当該農地に近接した場所に設置していなかったこと。
[4] 事業者に、殺虫剤に係る有害性の認識がなかったため、作業者に対し、事前に殺虫剤に含まれる有害物の有害性および中毒予防のための安全衛生教育を実施していなかったこと。

対策

[1] 作業者に有害物を含有する殺虫剤等を散布する作業を行わせるときには、当該作業に適した呼吸用保護具を確実に使用させること。
[2] 身体の露出が少ない保護衣等を着用させること。また、事業者は、呼吸用保護具、保護衣等の着用状況の確認をすること。
[3] 当該作業中、作業後等に、顔や手足などの露出部を洗浄するための設備を設置し、作業者に対し、洗身、うがい等を確実に実行させること。
[4] 事業者は、事前に、使用する殺虫剤に含まれる有害物の危険・有害性および取扱い方法についての調査、把握をしておくこと。また、当該作業に従事する作業者に対して、事前に、当該有害物の取扱いに関して発生する恐れのある疾病の原因および予防に関する事項等(当該有害物の有害性、使用すべき保護具の種類および適正な使用方法、事故発生時等における応急措置等)について安全衛生教育を実施し、周知しておくこと。