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労働災害事例

穀物製品の製造工場で粉じん爆発

穀物製品の製造工場で粉じん爆発
業種 その他の食料品製造業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 混合機、粉砕機
災害の種類(事故の型) 爆発
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.708

発生状況

本災害は、輸入とうもろこしを原料として家畜用の飼料などを製造する事業場で発生した。
 爆発したのは、粉砕機内部の繊維質の粉じん(含水量12%以下)で、噴き出した爆風が付近に堆積していた粉じんを飛散させ、着火するとともに、乾燥した繊維質粉の貯留室の前で作業をしていた被災者が爆風により火傷を負ったものと推定される。
 被害の発生当日、被災者は製造工場で朝から勤務についていた。別工場から入ってきた作業長は、直火型の乾燥機と貯留室との間からボッと音をたてて1mほど炎が上がり、付近の鉄骨に堆積した粉じんが燃え上がるのを目撃した。このため、作業長は2階に上がり、ホースで鉄骨に散水、これを消火した。1階にもどって乾燥機のバーナーを確認したところ、温度センサーによりバーナーは既に自動的に断火していた。
 次いで作業長は、貯留室から出て空気輸送管で送られる製品を見たところ、黒く炭化しているのを発見、被災者と2人で貯留室前の床に炭化した製品を2〜3m3取り出した。再びこれを乾燥機へ流れるコンベアーに乗せ、再投入するよう被災者に指示した。
 被災者はこの作業を1人で続けていたものと思われるが、最初の火災発生から約1時間後、スポーンという音とともに上方の工場建屋内が瞬間的に燃え上がった。炎は数秒で消え、鉄骨の上の堆積粉じんがくすぶっていた。消火器を取りに行こうとした者が、逃げてきた被災者が倒れるのを発見し、救助にあたったが、8日後に死亡した。

原因

本災害は、原料のとうもろこしから分離した繊維質の乾燥粉じんが爆発したものと考えられ、まず、粉砕機の内部で最初に爆発が起こり、作業場内の堆積粉じんを吹き飛ばして二次爆発を起こす一方、この粉砕機から爆風が被災者の作業していた貯留室に達して噴き出したものと推定される。
 着火源は不明であるが、最初の火災の影響がくん焼状態となって残っていたか、原料に含まれている異物によるスパークまたは静電気放電等が考えられる。
 ところで、可燃性の粉じんの爆発火災の危険性は、一般にはあまり知られていないが、現象としてはガス爆発と類似している。また、粉じん爆発の危険性はかなり広く存在しているので、可燃性の粉じんが存在している事業場では、その危険性について良く理解しておくことが必要である。
 粉じん爆発は、[1]穀物・金属・高分子化合物・化学薬品・石炭その他可燃性の物が、[2]乾燥している等可燃性の状態であり(食品等でも乾燥すれば可燃性となる)、かつ[3]粉状で(粒子径が500ミクロン程度以下のもので、粒度が小さいほど危険性が高い)、[4]空気中に浮遊した粉じん雲を形成し(粉じん濃度は爆発下限界以上)、[5]火気、火花(静電気放電を含む)等の着火源(十分なエネルギーとエネルギー密度を有するもの)が存在するときに発生する。
 粉じん爆発の特徴は、最初の小規模の爆発で生じた爆風によって堆積粉じんが舞い上げられ、爆発が次々と連鎖的に起こり(二次爆発)災害が拡大することである。また、可燃性の粉じんは粉じん火災を起こすことがある。

対策

粉じん爆発の防止の基本は、このような粉じん爆発の発生要因を除くことである。つまり、可燃性粉じんの除去、粉じん雲の生成防止、着火源の除去などである。このため、設備面での改善および設備・作業場の管理を適切に行い、作業に従事する者に対する教育を十分に実施することなどが大切である。