トルエンジイソシアネート中毒
業種 | 陸上貨物取扱業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.707
発生状況
災害発生当日、作業者Aは、トルエンジイソシアネート(TDI)の入ったタンクローリーを運転し、C社の定置タンクの場所に止め、1人で移液作業を実施した。まず、タンクローリーの荷台に上がり、マンホールの蓋を開け、バルブの開閉を確認しようとしたが、後部のマンホールの蓋を開けた時に反動で前部のマンホールの蓋が閉ったため、前部のマンホール内のバルブの開閉の確認をせずに、いきなりTDI取出し口を開けたが、その時タンクローリー内のTDIが突然噴出した。Aはとっさに前部のマンホールの蓋を開け、開いたままになっていたバルブを閉じたが、陽圧のため噴出したTDIを頭から浴びた。Aは被災後直ちに近くにいた作業者に連れられ、シャワー室で全身の洗浄を行ったが、両眼の痛みがひどく、近くの病院を受診した結果、20日間の休業となった。なお、タンクローリーより噴出したTDIは純度が100%で、量は約100lであった。
TDIは、主にポリウレタン樹脂や塗料・接着剤等の原料として使用されている。TDIは皮膚に触れると、赤く腫れて水泡が生じるほか、眼に入ると炎症を起こし視力障害を残すこともあり、さらに、鼻や喉や気管を刺激し、喘息様発作を生じさせる等の有害性があり、特定化学物質等障害予防規則において、特定第2類物質として規制されている物質である。
原因
[1] TDIの移液作業についての、作業者に対する作業手順を含めた安全衛生教育が不十分であったこと。[2] 特定化学物質等作業主任者が選任されておらず、運転手1人で作業を実施したこと。
[3] バルブの開閉について、マンホールの蓋を実際開けて見ないと分からない構造であったこと。
対策
[1] TDIの移液作業について作業手順書を作成し、関係作業者に周知させること。[2] 特定化学物質等作業主任者を選任し、当該作業に立ち会わせ、作業を指揮させること。
[3] TDIの取扱業務に常時従事する作業者に対して、6カ月以内毎に1回医師による健康診断を実施すること。
[4] 作業場に送気マスクまたは空気呼吸器を備え付け、常時有効にかつ適切に保持すること。
[5] マンホールの蓋を開けなくてもバルブの開閉が確認できるような構造または、バルブが開いている状態ではマンホールの蓋が閉まらないような構造にすることが望ましいこと。