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労働災害事例

バラストタンク内の酸欠事故

バラストタンク内の酸欠事故
業種 港湾海岸工事業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 異常環境等
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
建設業のみ 工事の種類 港湾海岸工事
災害の種類 酸欠
被害者数
死亡者数:− 休業者数:3人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.698

発生状況

本災害は、港湾のしゅんせつ工事を請け負ったA建設の作業者が、土運船のバラストタンクの中にたまった水を汲み出そうとしてタンク内に入ったことにより発生したものである。
 当該作業は、しゅんせつ船で掘削を行い、その土砂を2隻の土運船に積み込み、所定の場所に捨てる作業である。
 災害発生当日、1往復したあと土運船の船長は船の左舷後方部が傾いていることに気づき作業者B、Cにバラストタンク内を点検するように命じた。
 B、Cがバラストタンクに通じるマンホールを開いたところ、タンク内部に水がたまっていることが分かったので、船長がタンク内の換気をするため、エアポンプからエアホースをタンク内へ投入し、同時にB、Cが水中ポンプをバラストタンクの中へロープで垂らして入れた。ところが、ポンプがうまく水のある場所に行かなかったので、Bは位置を直すためタンクに突き出ている梁の上に乗ってしばらく作業をしていたが、急にこの梁から3.7m下の船底に落ちた。
 監視をしていたCが大声を出したところ、騒ぎを聞いたDがBを救助するため、何の装備もしないままで、ロープを持ってバラストタンク内へ入って行ったが、同じくタンク内で倒れた。
 その後、さらに副船長のEが、体にロープを結んでバラストタンク内へ入ったが、2mくらい下りた所で気分が悪くなり、危険を感じたためロープで引き上げられた。しばらくして、救急車が到着し被災者3名を救出した。
 バラストタンク内は、長期間密閉されており、内部は腐食がひどく酸素欠乏の状態にあった。災害発生時とほぼ同じ状態にあったと推定される他のバラストタンク内を測定したところ、結果は次のとおりであった。
 酸素濃度 16.9%
 二酸化炭素濃度 5ppm

原因

[1] 作業開始前に、当該作業場における空気中の酸素の濃度を測定していないこと。
[2] 空気中の酸素の濃度を18%以上に保つために必要な換気を行っていなかったこと(被災者は、換気を始めてすぐにタンク内に入っている)。
[3] 酸素欠乏症にかかった作業者を酸素欠乏の場所において救出する場合に、救出作業を行う作業者に空気呼吸器等を使用させなかったこと。
[4] 第一種酸素欠乏危険作業主任者を選任していなかったこと。
[5] 第一種酸素欠乏危険作業に係る業務に就く作業者に対し、事故の場合の退避および救急そ生の方法等特別の教育を行っていなかったこと。
[6] 管理監督者の酸素欠乏危険作業等に対する認識が不足していたこと。

対策

[1] 作業開始前に、当該作業場における空気中の酸素の濃度を測定すること。
[2] 空気中の酸素の濃度を18%以上に保つために必要な換気を十分行った後、作業にかかること。
[3] 酸素欠乏症にかかった作業者を酸素欠乏の場所において救出する場合に、救出作業を行う作業者に空気呼吸器等を使用させること。
[4] 第一種酸素欠乏危険作業主任者を選任し、作業に従事する作業者が酸素欠乏の空気を吸入しないように作業の方法を決定し、作業者を指揮する等の職務を行わせること。
[5] 第一種酸素欠乏危険作業に係る業務に就く作業者に対し、特別教育を実施し、酸素欠乏症に関する知識の不足から生ずる事故を防止すること。