フロンの置換による酸欠事故
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.695
発生状況
室内にある空調用冷凍機を定期検査中、冷媒として使用しているフロンが噴出し、作業者が酸素欠乏症により被災したもの。事業場甲は、高層ビルの地下機械室に設置されている四基の空調冷凍機を、約40日かけて定期検査する作業を請け負った。なお、この冷凍機は冷媒としてフロン22を使用しており、法定冷凍能力は約586トンである。
災害発生当日、事業場甲の作業者A、Bの2名は、すでに取り外して作動試験を済ませていた安全弁4個を、前日の朝から運転が停止されていた冷凍機に取り付ける作業を行った。まず、安全弁を油回収器に2個、凝縮器に2個取り付け、次に、安全弁の気密試験を行うこととした。これには、トーチの炎色反応により微量のフロン22を検出するハライドトーチ式フロンガス検知器を用いた。気密試験は、1つの安全弁について、元バルブをスパナを用いて半回転分だけ「開」にすることにより、フロン22の漏れの有無を検査する試験であり、4個の安全弁についてこの作業を繰り返し行った。
その際、Aが、油回収器に取り付けられている安全弁の周辺にある均油管を踏んだため、均油管と均油閉鎖弁の接続部が損傷し、当該接続部から潤滑油に混じってフロンが漏れ出した。
Bは、この状況を見て、損傷箇所からのフロンおよび油の漏出を止めようとした。この間にAは、油タンクの圧力を調べようと均油管と油タンクの接続部に近づき、ネジ込み部分のナットをゆるめた。すると突然ナットがはずれ、油とフロンが大量に噴出した。Aは階段部分まで約6mを自力で歩いて脱出しようとしたが、途中で意識不明となり、Bに発見され救急車で病院に収容された。
原因
作業者Aは、油タンクと均油管の接続を断つことにより、均油閉鎖弁接続部の油、フロンの漏出を止めることができると考え、均油管が接続されている油タンクのネジ込み部のナットをはずし、当該個所に止め栓をしようとしたものである。しかし均油管には6kg/cm2の圧力がかかっていたので、ナットをゆるめたとたんフロンが噴出し、このフロンにより作業場内の空気の一部が置換され、Aが酸素欠乏症となったものである。なお、冷凍機の構造に十分精通していたAにとって、油とフロンが噴出することは予測可能なはずであったが、最初の漏出により気が動転していた。このことが、本件災害の間接的な要因となったものと考えられる。対策
フロンが漏出するおそれのある場所における作業に際しては、フロンが外部へ直接放出できる設備を設ける等、フロンが該当場所に滞留することを防止する措置を講ずる必要があるが、その他に同種災害防止のため、次の措置を講じること。(1) 均油管等の損傷しやすい箇所には防護設備を取り付けること。
(2) フロン漏えい等の非常時の措置について作業対象の設備に応じた具体的な措置を樹立し、作業者に周知すること。
(3) 均油管にバルブを設ける等、均油管からのフロン等の漏えい時に均油管へのフロンの流入を止める設備を設けること。