1,1,1−トリクロロエタンによる洗浄中に発生した有機溶剤中毒
業種 | 電気機械器具製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.681
発生状況
この災害は印刷機の器具に付着したインクを洗い落とすために、有機溶剤洗浄槽に器具をつけ、洗浄作業を行っているうちに、有機溶剤の蒸気を吸入して急性有機溶剤中毒となり、意識不明の重体となったものである。被災者甲の業務は、通常は印刷に関する業務であるが、週1、2回、1回あたり1時間程度、印刷機の器具に付着したインクを洗い落とす業務を臨時に行っていた。
災害発生当日は、始業後2時間ほど過ぎたところで、器具に付着したインクを洗い落とすよう係長に指示を受け、洗浄の作業を開始した。
作業の内容は、印刷機の器具を取り外し、洗浄槽(1,1,1−トリクロロエタン槽)につけ、器具に付着した印刷インクを1つずつはけを使って洗うものであった。
なお、作業場所は、工場の建屋内にあり、洗浄槽の上部には、蓋が設けられており、作業時に、この蓋を取り除くと洗浄槽の奥に取りつけられた局所排気装置が自動的に稼働する構造となっていた。
10時頃甲は、洗浄槽の蓋を外し洗浄作業を開始した。このとき、局所排気装置は通常どおり作動していた。この状態で10分ほど作業をしたところで、甲は意識を失い床に倒れてしまった。
幸い付近にいた同僚が、甲の倒れる音を聞き、直ちに病院に運んだが、甲の意識が回復したのは、翌日になってからのことであった。
また、甲がこの業務に就いたのは、約1カ月前であった。
原因
1 第二種有機溶剤である1,1,1−トリクロロエタンを使用して洗浄業務を行うために、会社は洗浄槽に局所排気装置を設けてはいたが、整備等が不十分であったため、当初の能力を保持していなかったこと。2 有機溶剤を用いて行う作業を甲に行わせるに際し、作業に関する指示を十分に行っていなかったこと。
3 有機溶剤の毒性等に関する事項について十分に教育を行っていなかったこと。
等により、甲は1,1,1−トリクロロエタン蒸気を多量に吸いこんでしまったものである。
対策
[1] 設置してある局所排気装置について、所定の制御風速を出し得る能力を有するようフードを改善する[2] 局所排気装置については、定期的に検査を行う等、確実な保守管理を行う
[3] 洗浄作業に従事する作業者に対して、作業標準、および労働衛生教育を徹底する
等の対策を講ずる必要がある。
また、有機溶剤中毒については、急性中毒の他に、低濃度暴露を長期間続けることによる中毒もあるため、定期的に健康診断を受けさせ、健康管理を行うことも必要である。