上水道取水場のポンプ井内で発生した一酸化炭素中毒
業種 | 水道業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.673
発生状況
本災害が発生した取水場は、浄水場より約100mほど離れた場所にあり農業用水より取水している。取水場では、取水ゲートより取水した水を沈砂池で水中の土砂等を除去し、沈砂池とゲートでつながったポンプ井より浄水場までポンプで送水している。災害が発生したポンプ井は、7.8×3.8×6.62mのコンクリート製密閉水槽で上部には70×70cmの出入口が設けられており、鋼製のふたで覆われている。
本災害はポンプ井内に配管された導水パイプの先に取り付けられた逆流防止用弁(フード弁)の交換作業中に発生した。
本作業に従事したのは、工務係及び浄水場係の6名である。まず、沈砂池とポンプ井を区切るゲートを閉めた後、ポンプ室のポンプを使用してポンプ室の水を汲み上げた。水位がフード弁の位置まで下がった後、ポンプ井の入口わきにガソリンエンジン駆動部を置き、これとセットになっている水中ポンプをポンプ井内に入れさらに水を汲み上げた。その後、工務係班長が木製やぐらを組み、これにチェーンブロックを取り付け、数名の作業者で新しいフード弁をポンプ井内に降ろす作業を行った。
この時、工務係班長はポンプ井内に入り水の状態を確認したが、ゲートの閉まりが悪く水が流れ込んでいたためゲートの閉め直しを指示し、水の汲み上げ効率を上げるため2台目の水中ポンプを使うこととした。2台目の水中ポンプは連結ホースが短いためガソリンエンジン駆動部をポンプ井内のタラップわきにつるす形で設置した。そして内燃機関をポンプ井内で使うことから、換気のため、エアコンプレッサーを作動させるよう指示し、ホースをポンプ井内に垂らし空気送入を開始した後エンジンを稼働させた。
ポンプ井内の水位が、フード弁の取替作業ができる程度に低くなったので、工務係班長と作業者3人(A、B、C)の計4人がポンプ井の底に降り作業に取りかかった。しかし、フード弁がさびついて取り外せないため工務係班長が工具を外に取りに行き、その際ポンプ井内につるしたガソリンエンジンを停止させた(このポンプの稼働時間は約20〜30分だった)。エアコンプレッサーによる送気はそのまま続け、その後引き続き4人はフード弁取り外し作業に従事した。30分ほど経過したころ作業者Aは気分が悪くなり新鮮な空気を吸いたいと思い、外に出て休憩をとっていた。その数分後作業者Bも気分が悪くなり外へ出ようとタラップを昇っていたところ途中で力が抜け墜落してしまった。これを見た作業者Cは、ポンプ井の外にでて救助を求め、ポンプ井内に残った工務係班長がBを介抱していたが、数分後班長も意識を失った。
ポンプ井外部にいた作業者Aが災害発生の連絡のため事務所に行き、かけつけた浄水場職員によりBと工務係班長は救出された。
ポンプ井内で作業をしていた工務係班長と作業者A、B、Cは病院へ搬送され作業者B、Cと工務係班長の3人が11日間入院した。
原因
[1] 水中ポンプのガソリンエンジンをほぼ密閉された槽内で使用したこと。[2] エアコンプレッサーによる換気が不十分でガソリンエンジンの排気ガスがポンプ井内にたまったこと。
である。
対策
[1] 換気の不十分な場所で内燃機関を使用しないこと。[2] やむを得ず内燃機関を使用する場合には必要な換気量を確保できるような換気装置を用いること。
[3] 作業を始めるにあたり一酸化炭素用呼吸用保護具を準備しておくこと。
[4] 作業標準を作成し、作業者に教育を行っておくこと。
があげられる。