古紙パルプの貯留槽で酸素欠乏症、硫化水素中毒が発生
業種 | その他のパルプ・紙・紙加工品製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.667
発生状況
甲製紙株式会社は、古紙パルプを使用してダンボール用原紙を製造している。その製造工程の概要は、新聞紙、ダンボール等の古紙を溶解し、古紙パルプを作り出し、離解、洗浄等を行い、さらにこれに染料、定着剤を添加する等の加工を行うことにより、完成パルプ液を作り出し、それから紙の抄造を行うものである。作業者Aは、災害発生当日、染料、定着剤等の添加剤が投入され、貯留槽(以下「チェスト」という)に貯められているパルプ液を、かくはん器によりかくはんし、これを完成パルプ液貯蔵槽に送給する作業に従事しており、災害はこのチェスト(深さ3m、幅3m、長さ7.1m)の内部で発生した。
当日の夕刻、Aはかくはんされているはずのパルプ液がチェスト内で回流せず、平常はおかゆ状になっているものが、水分が減少しブロック状に凝固していることに気付き、チェスト内のパルプ液を完成貯蔵槽に送給するポンプを停止し、チェストの開口部付近から、その内部に水を補充した。約5分間水を補給しているうちに、チェスト内のパルプ液は再び回流した。
このため、Aは、パルプ液を完成貯蔵槽に送給しはじめたが、しばらくすると完成貯蔵槽に送られてくるパルプ液の状態が再び水分が少なくなったため、再度、チェスト内に水を補給する必要があると判断し、今度は、水補給用の高圧ホースを持ち、チェスト内部に設けられているはしごをつたい、チェストの内部床面まで入った。
一方、パルプ液に添加剤等を投入する作業に従事しているBは、Aが作業場所に見えなかったため、チェストをのぞき、パルプ液に浮いているAを発見し、事務所に災害発生を連絡した。災害の知らせを受けた甲製紙株式会社の代表取締役Cと同従業員Dが救出のため無防備でチェスト内に立ち入ったため、両名ともチェスト内で倒れた。
原因
[1] チェスト内の酸素および硫化水素の濃度を事前に測定しなかったこと。また、測定用具の備えつけがなかったこと[2] 作業者に対して、酸素欠乏、硫化水素発生のメカニズム、その危険性、災害防止のための必要な措置等について、教育が行われていなかったこと
[3] 第二種酸素欠乏危険作業主任者が選任されていなかったこと等、労働災害防止管理体制が確立されていなかった
[4] 空気呼吸等被災者救出のための用具が備えつけられていなかったこと
等、酸欠則に定める措置が履行されておらず、このため、無防備でチェストの内部に立ち入った3名が酸欠空気および硫化水素を吸入し、被災した。
対策
[1] 酸素欠乏空気、硫化水素の発生のおそれがある場所では、作業開始前にこれらの濃度を測定し、かつ、少なくとも酸素濃度を18%以上、硫化水素濃度を10ppm以下にするよう換気を行う[2] 濃度測定用器具を備え、かつ容易に利用できるような措置を講ずること
[3] 作業者に対し、酸素欠乏症・硫化水素中毒に関する教育を行う
[4] 事業場内の酸素欠乏危険作業を確実に把握するとともに、同場所での作業について、作業時期、内容、方法、人員、作業主任者の選任等災害防止対策を事前に検討し、かつそれらを確実に履行する
[5] 非常時において作業者を救出するために必要な空気呼吸器等を作業場に備えつけ、日常からその取り扱い方法等を訓練する
等の措置を行う必要がある。