スイミングスクールのプールで清掃中、塩素ガスを吸い込む
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.665
発生状況
本事業場は、児童および成人に水泳を教えることを業とする、従業員8名のスイミングスクールである。本事業場では、プールに入れる水については、自ら井戸水を次亜塩素酸ナトリウムにより殺菌し、さらにその不純物をポリ塩化アルミニウムによる凝集沈殿および濾過により除去して使用している。このプールの水の残量塩素量は、0.4ppmから1ppmの間に設定しており、残留塩素をこの濃度に調節するため、毎日1回プール使用終了時に、次亜塩素酸ナトリウム約5lを20lポリタンクより直接プールに入れていた。
災害発生当日、被災者Aら4名は、午前10時より講習前の清掃作業を行っていた。午前10時30分ごろ、被災者Aは、プールサイドの用具室に置かれていた残留塩素調節用20lポリタンクの次亜塩素酸ナトリウムの量が少なくなっていたので、これを補充することとした。
このためAは、ボイラー室に、次亜塩素酸ナトリウムを取りに行ったが、ボイラー室には、次亜塩素酸ナトリウムの容器(20l、薄緑色)のほかに、ポリ塩化アルミニウムの容器(20l、青色)が置かれていたため、被害者Aはポリ塩化アルミニウムの容器(残量約10l)を次亜塩素酸ナトリウムの容器と思い込み、用具室に持ってきた。
用具室のドアを半分程度開けた状態で、室内においてあった次亜塩素酸ナトリウムのポリタンク(残量約5l)に、持ってきたポリタンクの中身を入れたところ、塩素ガスが発生した。被災者Bは、この塩素ガスを吸い込み、のどや目の痛みを訴え3日間入院した。
原因
本災害の直接の原因は、ポリタンクの中のポリ塩化アルミニウムを、次亜塩素酸ナトリウムの入っているポリタンクに注ぎ込み、次亜塩素酸ナトリウムとポリ塩化アルミニウムに含まれていた塩化水素とが反応して、塩素ガスが発生したことであると思量される。なお間接的な原因としては次のものが挙げられる。[1] ポリ塩化アルミニウムの容器を、次亜塩素酸ナトリウムの容器と同じ場所に置いていたこと。
[2] 次亜塩素酸ナトリウムを取り扱う作業者に対する教育が不十分であったため、作業者が中身の確認をしなかったこと。
対策
[1] ポリ塩化アルミニウムの置き場所を、限定するか、または、補助タンクが空になった時には業者に補充させることにより、事業場内にポリ塩化アルミニウムの容器を置かないようにすること。[2] 次亜塩素酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム等、事業場で使用する物質の化学的性質、有害性、取扱上の注意事項等について、関係作業者に十分な教育を実施すること。
[3] 次亜塩素酸ナトリウムの容器への注ぎ足しを行わないようにすること。