建設工事における有機溶剤中毒
業種 | 建築工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 建築工事 | ||||
災害の種類 | 中毒 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.663
発生状況
被災者Aは、公営住宅建設工事に下請建設会社のとび土工として従事していた。災害発生当日の午後は、雨が強く降っており、外での仕事ができない状態だったため、元請会社の工事主任は、Aおよび同僚2名に、1階床下部分の地中梁に断熱材を貼り付ける作業の実施を指示した。
断熱材を貼り付ける地中梁は、建物の中央部分の床下にあり、床下の空間は地中梁によっていくつかの部屋に仕切られており、地下室のようになっていた。床下に出入りするとき、床に設けられた開口部(450mm×1,200mm)を昇降口として利用していた。開口部は南側と北側に2カ所設けられており、他に通気孔(直径160mm)が南側に2カ所、北側に1カ所設けられているのみであった。
作業は、発泡ウレタンからなる断熱材を、ノルマルヘキサン60〜70%含有のゴム系の接着剤で、地中梁の壁面に貼り付ける作業であった。
床上で1名が断熱材の切断を行い、Aともう1名が床下に入って作業を行った。接着剤は17l入りの缶のまま床下に持ち込み、Aが接着剤を木片ですくって地中梁の壁面に塗り、他の1名が断熱材をその上から貼り付けていた。作業は南側の床下から始め、40分ほどで終了し、20分ほど休憩した後に、北側の床下作業に入った。作業再開後20分ほど経ったころ、突然Aが倒れたので、他の2名で床上に引き上げ病院に収容した。
病院収容後、回復してからのAの話では、北側の床下作業を開始して5分くらいまでの記憶しかないとのことであった。
原因
[1] 床下部分という通気の悪い作業場所において、換気設備による換気を行わないで有機溶剤業務を行ったこと。このため床下部分に高濃度の有機溶剤の蒸気が滞留したこと。災害の発生した翌日も、床下部分には強い有機溶剤臭が残っているほどであった。[2] 呼吸用保護具(送気マスク、防毒マスク)を使用しなかったこと。
[3] 有機溶剤作業主任者を選任していなかったこと。
[4] 作業者に、有機溶剤を使用していたという認識がなく、作業を指示した元請け作業者も注意を与えなかったこと。
対策
[1] 全体換気を行ったうえで防毒マスクを着用させること。[2] 全体換気のない場合は、送気マスクを着用すること。
[3] 有機溶剤作業主任者を選任して、作業を直接指揮させること。
[4] 関係作業者に対する教育を徹底すること。