貨物船の船倉内で発生した酸素欠乏症
業種 | 港湾荷役業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.655
発生状況
埠頭に接岸した貨物船から、原木の荷卸し作業中に発生したものである。災害発生当日は甲板上の1番デッキから4番デッキ、翌日は船倉である1番ホールドから3番ホールドまでの原木の荷卸しを予定していた。当該作業は、船内にホールドマン(倉内員)4名、ウインチマン(揚貨装置運転手)1名、デッキマン(船内荷役作業主任者)1名の計6名が2組に分かれ行っていた。一方、海に降ろされた原木は、いかだ士2名によりいかだに組み、3隻の船舶で貯木場へ運搬していた。このほかに作業長Aが作業現場の巡視を行っていた。
災害当日午前7時30分に、Aは荷役作業者の出勤を確認し、人員配置及び作業内容の打合せ等を行って、他の船舶の巡視に回った。
午前11時過ぎAは当該貨物船にもどり、4番ホールドの酸素濃度の測定を始めた。まず同ホールド入口の引き戸を開け、引き戸そばの踊り場で酸素濃度を測定していた。(濃度測定器は21%を表示)
その後、昼食過ぎの午後1時になってもAの姿が見えないのに気づいた同僚のBが、船内を捜していたところ、4番ホールド内のハッチ底部の踊り場で両ひざをかかえるように座り込んでいたAを発見した。Aは直ちに引き上げられ(午後2時過ぎ)病院に収容されたが、高圧酸素治療を受けてはじめて人の顔を識別できるようになった。しかしAは4番ホールドのハッチからどのように下に降りたか覚えがないという状態であった。
災害発生後の4番ホールドのハッチ入口付近の酸素濃度の測定結果は表1のとおりであった。
ところで、4番ホールドはその当時荷卸しする箇所ではなくAもそのことを認識していた。しかしAが同ホールドの酸素濃度を測定したのは次の理由からであった。
(1) デッキ上の原木の荷卸しが終わり次第、ホールド内の原木の荷卸しをすることになるが、2番及び3番のデッキ上では揚貨装置を使用して作業を行っていたため、その下の2番又は3番のホールドへ立ち入るには危険である。
(2) 4番ホールドの内部でも1〜3番ホールドの内部の酸素濃度の状態に変わりはなく、少しでも早く事前にホールド内の酸素濃度の状態を把握して作業を進めようとした。
(3) 4番ホールドはタラップで船内へ入ってすぐ近くだった。
原因
[1] 酸素欠乏危険作業を行うにあたり換気することなく、また、空気呼吸器等を使用しなかったこと。[2] 原木の荷卸し作業の対象となっていない4番ホールド内へ1人で立入ったこと。
対策
[1] 酸素濃度測定作業を含め酸素欠乏危険作業を行う場合は、空気中の酸素濃度を18%以上に保つよう換気を行うこと。[2] 密閉式の船倉内の空気はハッチのふたを開けるなどして換気を行うこと。また換気することが困難な場合は空気呼吸気等を使用すること。
[3] 酸素欠乏危険場所へは1人で立入らないで監視人を置くなど通報体制を講ずること。
[4] 右記[1]〜[3]の作業標準を十分理解して作業を実施するよう教育等により徹底すること。