金属工場における酸素欠乏症
業種 | 非鉄金属製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 異常環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.649
発生状況
A事業場は、主として希土類金属を鉱石から、分離・精製する製造工場で、約200名の従業員が働いている。災害は、酸化ランタン焼成炉の除じん装置で発生した。
タンクは容積が約3.5m3で、下部に堆積するシュウ酸ランタンあるいは反応の途中で生ずるランタン炭酸化物(La2O(CO3)2)を回収する目的で設けられている。
災害前日は年末の休みのため炉は停止されて、次の日にタンク内の堆積物を取り出す予定であった。この日はタンク内の水を汲み出す作業を行った。ポンプである程度の水を汲み出した後、作業者Aがタンク内に入り、バケツで水を汲み出し、堆積物の上面より少し水が残る程度で作業は終了した。この日、作業者Aは身体的な異常は生じなかった。
次の日、作業者Aはタンク内の堆積物をバケツで汲み出すため、タンク内に入った。スコップで堆積物をすくってバケツに入れ、バケツが一杯になったところで、タンク外の作業者に渡す手順になっていた。
Aがタンク内に入って作業を開始して5分してから、腕がだるくなり、目の前が暗くなってきたので「疲れたから休憩する。はしごを入れてくれ」と言った後まもなくして、Aはその場に倒れ、身体を動かすことができなくなった。これを見た同僚Bがタンク内に入り助け出そうとしたが、その間にBも意識をなくしてしまった。この状況に驚き、作業者Cがタンク内に入りBを助け出したが、作業者Cは早めに外に出たため、意識を失うまでには到らなかったが、もうろうとした状態であった。
救急隊が来るまで3名は、酸素吸入器で酸素を吸入した。病院では、BおよびCは症状が軽く1日の入院で済んだが、Aは週間の入院、休業9日間となった。
原因
災害発生前日に作業をしたときには身体の異常が認められなかったこと、堆積物の処理を始めたときに災害が発生したことから、災害の原因は、堆積物中に滞留していた不活性ガス等が空気中に放出され、作業場所の酸素濃度が低下したことが考えられる。災害発生場所は、災害の直接原因は別として炭酸ガスを入れたことのあるタンクで、労働安全衛生法施行令別表第6第11号に該当する酸素欠乏危険場所である。
対策
[1] タンク内が酸欠場所であることを認識する。[2] タンク内に入る場合には、酸素濃度等の測定や換気を十分に行う。また酸素欠乏危険作業主任者の選任と、その職務を十分行うことができるようにする。
[3] 作業者に酸素欠乏危険作業等についての教育を実施する。
[4] 酸素欠乏危険作業をなくすための措置を講ずる。具体的には、タンク内に堆積物を沈殿させず、ポンプにて常に回収する等。