フロンが分解して発生した有害ガスによる中毒
業種 | 化学工業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 有害物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.647
発生状況
A社は、化学物質の開発、製造、販売等を行う企業である。定期的な点検により、同社の試薬製造工場内に設置してある冷房機に内臓されている大型の熱交換器から冷媒(フロン11)が漏れていることが、判明した。同社では、熱交換器を交換することとし、同社の保全部門に対して、その修理を指示した。保全部門の2名の作業者は、午後1時15分頃から作業を開始した。
まず、熱交換器を取り外すため、熱交換器に接続されている銅管を切断する必要があったが、その前段階として銅管内の冷媒を、直接室内へ流出させた。その量は、4〜4.5kgである。
ところが、図1に示すように、この冷媒が冷房機のある室から空調用ダクトを通して、試作品試験室及び試作品製造室へ流出した。これらの室は全てクリーンルームだったため、全室に気流が循環しており、通常の建物に比して、内部の気流の循環量は著しく多く、しかも外部からの空気の取り込み量は著しく少なかった。このため建物内に冷媒が急速に拡散して室内のフロンガス濃度が上昇した。
当時、試作品試験室、試作品製造室においては、ブンゼンバーナーを、それぞれ、5本と20本点火して作業を行っていたが、9名の作業者が次々に異臭を感じ始め、さらに目の痛み、喉・胸の痛み、咳等を訴えた。2時頃には全員が室から退出したが、医師による診断を受けたところ薬物中毒と診断され、3日〜7日の入院となった。
当日、被災者のいた作業場には有害なガス等が発生する要因はなく、またそれまでも、同様の作業を行っていて問題となったことはなかった。調査に当たった者も、最初、中毒の原因が分からなかったほどである。しかし、冷房機の修理のためフロンを室内に放出していたこと、被災者たちがブンゼンバーナーを点火していたことの2点から、フロンがバーナーの火炎で熱分解して発生した有害ガスによる中毒と判断された。