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労働災害事例

鉛塔炉修工事中に発生した酸素欠乏災害

鉛塔炉修工事中に発生した酸素欠乏災害
業種 建築設備工事業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 異常環境等
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
建設業のみ 工事の種類 その他の建築工事
災害の種類 酸欠
被害者数
死亡者数:− 休業者数:2人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.645

発生状況

本災害の発生した事業場は、精留塔8基をそれぞれ定期的(2年に1回)に炉修(炉の補修・点検)を行うことになっており、今回はそのうちNo.1の鉛精留塔の炉修工事を行っていた。
 この作業は、サプライポット内に付着した亜鉛かすを取り除き、煉瓦を解体する作業である。
 サプライポットとは、蒸留工程から供給される溶融状態の蒸留亜鉛を精留塔に受け入れるための炉であり、精留塔が稼動している際は、このサプライポット内において、COガス及び重油を燃焼させ、亜鉛を一定の温度の溶融状態に保ちながら精留塔本体に供給するものである。
 災害発生前日、作業者AとBは午前中サプライポット内の東側スキミングドア、天井、側面、床面の亜鉛かす取りを手ハンマーとタガネを用い、固い部分については、ハンドピックを用いて行った。亜鉛かす取り終了後、炉内を清掃し集めた亜鉛かすを炉外へ運び出した。午後からは、Aだけがメルティングポット部分の亜鉛かす取り作業を行った。
 災害当日、Bが先にサプライポット内でハンドピックを用いて煉瓦解体作業を始めた。15分後にサプライポット内に入ったAは、Bの作業を見ているうちに2〜3分程して倒れた。これに気づいたBは、炉外で別の作業をしていた同僚Cに助けを求めた。連絡を受けたCがAを助け出そうとした時、今度はBが倒れた。これを見ていた他の同僚の1人が、助け出そうとしたCを外へ出し、炉内に空気を送り込んで、すぐにAとBを救出した。

原因

災害発生後CO濃度を測定したが検出されなかったことから、本災害は酸素欠乏による災害と考えられる。
 酸素欠乏の原因としては、燃焼又は炉壁等の酸化(さび)により酸素が消費されたことが考えられる。
 災害発生当日、排気ダクトは稼動していたが、南側スキミングドアは閉じていたことにより、空気の大部分が東側スキミングドアから排気ダクトへ、そして一部が北側スキミングドアから排気ダクトへと流れ、サプライポット本体部の連絡口により南側のCO配管等が接続されている奥の部分は空気が滞留し換気がほとんど行われなかったと考えられる。
 先に炉内に入ったBは、メルティングポットとの間の連絡口部分で作業していたが、この部分は北側スキミングドアから排気ダクト方向への空気の流れがあり、当初酸素欠乏症にならなかったと思われる。

対策

[1] 作業の開始に際して作業標準の作成等を含み、作業条件の十分な把握を行った後、適正な措置を講じたうえで作業に取りかかること。
[2] 炉内での作業を行う場合には、作業開始前に酸素濃度及びCO濃度の測定をすること。
[3] 炉内で作業を行う場合には、十分に炉内の換気を行い、酸素欠乏症や中毒症状の発生することのないようにすること。
[4] 酸素欠乏危険作業主任者等、酸欠作業の危険性などについて十分認識のある者の指揮のもとに作業を行わせること。
[5] 作業者に対して酸素欠乏の危険性があることを認識させ、酸欠作業の危険性等についての教育を実施すること。